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点鬼簿(てんきぼ)[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.83

森岡聖次 (夢眠クリニック名張院長)

登録日: 2019-01-05

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ご縁あって2016年9月から三重県名張市で勤務している。大学卒業後はへき地勤務を含めて、主に和歌山県内で働いてきた。三重県名張市は大阪にも名古屋にも至便で住みやすい土地柄であるが、自然が保たれており、昆虫採集を趣味にしている小職にとっては働くには誠に適地であると感じている。

点鬼簿とは、芥川龍之介の作品にもあり、毎日新聞が12月31日にその1年間に死亡した著名人のリストに点鬼簿と冠して記事をつくっていたので、ご記憶の向きもあると思うが、「死者の姓名を記した過去帳」ということであるらしい。

私は和歌山県田辺保健所勤務当時に、たばこを吸っていた著名人が、どのような病気で亡くなっているのかを調べたことをきっかけに点鬼簿に興味を持ち、今日(2018年10月10日現在)まで継続して調査している。当然、時代とともに病態も変化しているのでよく見る死因も変動しているが、最近ではがん、循環器疾患による死亡例が比較的多い。これまでの経緯は何度か論文にしている(禁煙科学. 2012;6(3):1-5、禁煙通信. 2015;24(1):6-7、禁煙通信. 2017;26(1):11-14、など)が、現在のたばこ病死亡リストは最古の記録を15世紀とし、この550年間で8000人を超える男女が収載されている。残念ながら、このうち15%は死因不明で評価できない情報であった。

この中で私が得た結論は、当然ながら、たばこが非常に大きな健康リスクになっていること、また、個々の死亡情報は貴重なものであり、ぜひ死因を公表してもらいたい、ということである。せっかくの健康情報が、死蔵されたり、活用されることなく廃棄されることがなくなるよう、念願している。この点、医学関連の死亡についてはBr Med J誌などにみられるObituary記事は、1頁に死亡者の経歴、死因、業績などを網羅し、有用性が高い。人間は生涯に一度死ぬ。その意味を想い、ぜひ後に続くものの人生にも示唆を与えてもらいたい。

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