月経痛が強く,学業や家事・仕事など日常生活に支障を来す月経困難症のうち,子宮内膜症や性器奇形など月経痛の原因となる器質性疾患があるものを器質性月経困難症,全く原因疾患がないものを機能性月経困難症と呼ぶ。
器質性月経困難症はホルモン療法(黄体ホルモン・GnRHアゴニスト),LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン)製剤,LNG-IUS(レボノルゲストレル放出子宮内システム),手術などの西洋医学的治療が適応となる場合が多い。特に思春期で手術適応がない場合,LEP製剤が推奨されている1)。
機能性月経困難症では,子宮収縮と疼痛を起こすプロスタグランディンの分泌が多いとされており,NSAIDsなどの鎮痛剤およびブチルスコポラミンなどの鎮痙剤を疼痛が出る前から定期的に内服することでコントロールすることが重要である。
しかし,それらが無効な症例や鎮痛剤を内服できない症例において漢方薬が有効な場合も経験される。
よく使われる婦人科三大漢方薬(当帰芍薬散・加味逍遙散・桂枝茯苓丸)が有効な症例もあるが,胃腸が弱くやせ型で,腹直筋の緊張が強い症例では,月経時に下痢や嘔気・嘔吐を伴い,また月経時以外でも腹痛や軟便を訴える場合が多い。
このように嘔気や腹痛を訴えるため婦人科三大漢方やLEP製剤の内服ができない場合,小建中湯を内服して月経困難症が軽快し,胃腸の調子も改善し,休業が減ることをよく経験する。
小建中湯は,腹痛に使われる桂枝加芍薬湯に膠飴が加わったものであり,膠飴により腸内環境が整うこと や芍薬による鎮痙作用などがあるため月経困難症にも有効と考えられる2)。
小建中湯を月経困難症に使用する場合の投与量は1日7.5〜10.0gを基本とする。体重によっては1日5gでも効果が認められる。