患者自身が気づいていない発痛源検索にも,事実質問は役立つ
患者が生活指導を受け,納得してセルフケアをするためには,自身の発痛源を医療者と共有する必要がある
高齢化の進むわが国では,運動器疼痛の愁訴が多く1),これが日常生活動作を低下させ社会参加を妨げ,ひいては生活の質を低下させることが懸念されている。
こうしたなか,運動器疼痛の保存療法技術向上をめざす「整形内科(non-surgical orthopedics)」が注目されている。整形内科診療では,慢性の運動器疼痛患者に対して,生活指導を行うことも治療の一環ととらえている。生活指導において,患者教育(痛みへの理解),認知行動療法を通じて,痛みの原因となる生活動作を避けることや,体操・運動を行うなどのセルフケアの継続をめざしている2)。この主体は患者自身であり,生活指導により行動を変えるためには,患者が自身の発痛源に気づき,特定の動作が原因となっていることを納得することが必要である。そこで我々が外来診療で大事にしている3つのポイントがある。
①原因動作を動画で再現するように問診すること
②超音波診断装置(以下,エコー)を用いて,発痛源の部位を患者にも見える形で共有すること
③注射などの治療介入後に原因動作の改善有無を確認すること
特に,上記①の問診は重要で,この拾い上げが間違っていると,まったく違う部分への介入を行うこととなってしまうため,事実質問(特集2を参照)をベースに聴取するようにする。
本稿では,これらの生活指導のための3つのポイントについて実際の症例をもとに記載する。