胃食道逆流症(GERD),機能性ディスペプシア(FD),過敏性腸症候群(IBS)などの機能性消化管疾患は高頻度でオーバーラップすることが知られている。
特にGERDやFDの初期治療としてPPIが汎用されるが,胸焼けや胃もたれ症状が残存する患者も少なからず存在し,そのような場合,六君子湯を併用する場合が多い。しかし,六君子湯は高齢のやせ型女性には有効であるものの,それ以外のprofileでは効果が乏しい場合もある。
一方,半夏瀉心湯は六君子湯と同様に胃排出促進作用を有することが知られているが,その効果を示した研究報告はほとんどない。そこで,PPI抵抗性GERD症状を有する患者に対して,半夏瀉心湯の有効性を前向き試験として検証した(表)。
その結果,Total FSSG(mean±SD)はベースライン(14.7±6.2)に対して半夏瀉心湯4週間治療後(10.9±6.3)に有意に低下した(p=0.022)。また,4週間治療後に逆流症状(RS)スコア,運動不全症状(ARD)スコアの有意な低下が認められた(p<0.005)1)2)。FSSGの12サブスケールスコアのうち,特に中年男性の「お腹のはり」「胃もたれ」「つかえ感」「げっぷ」などのARD症状に有効であった。
提示した症例のように,PPIでは上部消化管症状がとりきれず,加えて下痢型IBSも合併した患者において,半夏瀉心湯の併用投与は上部消化管症状も下痢症状も改善し,QOLの向上を認めたケースがあった。
機能性消化管疾患の治療は,病態が複雑なため難渋する場合が多いが,十分な改善効果が得られない場合の選択肢として半夏瀉心湯を加えたい。