2009年に「腹膜透析ガイドライン」が策定されて以後,腹膜透析(PD)の分野においても様々な知見が報告され,治療戦略や考え方も変化した
「腹膜透析ガイドライン2019」では,Part 1,Part 2にわけ,従来の記述形式をPart 1としてPD全体を理解できるよう配慮した。Part 1は,本来のガイドラインとしては必須のものではなかったが,医師,看護師等のコメディカルのためにも必要と考え作成することになった
Part 2は,本来のガイドラインのコアとなる部分である。6つのクリニカル・クエスチョン(CQ)を挙げ,エビデンスの検証からシステマティックレビュー(SR)を行った。さらに「利益と害の評価」に基づいて「患者ケアを最適化」するための「推奨」をパネル会議により決定し記述した。パネル会議では,専門医,専門看護師,在宅医師,患者によって投票を行い,様々な視点から推奨度を決定した
Part 1は,これまでの「導入」「適正透析」「栄養管理」「腹膜機能」「被嚢性腹膜硬化症(EPS)回避のための中止条件」の5章に加え,「腹膜炎管理」「カテーテル・出口部管理」が追加され,「腹膜透析ガイドライン2019」では,Part 1でほぼすべてのPDの管理を網羅するものとなった。また,すべての章について小児の項目を設けた
ステートメント:腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)の導入に際しては,血液透析(hemodialysis:HD),さらに腎移植に関する十分な情報を患者に提供し,同意を得た上で決定する。患者によって提供する情報の選別は,行わない。
今回のステートメントでは,適切な患者教育から計画的な導入を推奨している。慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)ステージ4に至った時点で,腎代替療法に関する情報を提供し,CKDステージ5になり,保存的治療に抵抗する臨床症状がみられた場合に,透析導入を検討するように記載されている。腎機能(glomerular filtration rate:GFR)のみから導入基準を設ける医学的根拠は必ずしも十分とは言えないが,高度腎機能障害と栄養状態悪化さらに予後とは強い関連性があり,PD導入が予定されている場合は,自他覚症状を認めなくとも,GFRが6.0mL/分/1.73m2未満の場合は導入を考慮するよう述べている。また,日本腎臓学会を含めた他のガイドラインやガイド類と齟齬がないように配慮した。