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(2)高年齢労働者の安全の確保[特集:高年齢労働者の健康と安全の確保]

No.5016 (2020年06月13日発行) P.26

能川和浩 (千葉大学大学院医学研究院環境労働衛生学講師)

登録日: 2020-06-12

最終更新日: 2020-06-10

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Point

高年齢労働者の労働災害が増加しており,安全対策が必要である

50歳以上の労働災害は「転倒災害」「墜落・転落災害」が約半数を占める

産業保健スタッフだけでなく,経営層を巻き込み全社を挙げて取り組む

対策の基本は労働衛生の3管理である

「エイジアクション100」などのツールを活用する

1. 「エイジアクション100」

高年齢労働者対策で,重要な課題のひとつが安全の確保である。2018(平成30)年の死傷災害(休業4日以上)は約12.7万件であるが,その約半数は50歳以上となっている。また,労働災害の発生率を表す年千人率(1年間の労働者1000人当たりの死傷災害発生率)についても,50歳以上と50歳未満で比較すると,いずれの業種においても50歳以上が高くなっており,高年齢労働者の労働災害防止対策は喫緊の課題となっている。50歳以上の事故の種別としては,「転倒災害」「墜落・転落災害」が約半数を占めており,これらの災害に注目して優先的に対策を進めるべきである。

そこで,2018年に中央労働災害防止協会は,高年齢労働者の安全と健康確保のための100の取り組みを盛り込んだチェックリスト「エイジアクション100」を発表した。このチェックリストは,職場の課題を洗い出し,改善に向けての取り組みを進めるための職場改善ツールである。本稿では,「エイジアクション100」の内容の解説を中心に,職場ですすめるべき対策について概説する。

2. 職場における高年齢労働者の就労状況を知る

高年齢労働者の安全の確保には,作業管理,作業環境管理,健康管理の観点から幅広く対策する必要があるため,産業保健スタッフだけでなく全社を挙げて取り組むことで,よりよい改善につながる。そのため,最初に会社の経営層が,高年齢労働者の安全衛生対策の重要性について理解し,職場改善のための意志表明をすることが重要である。

実際的な最初の活動としては,職場における高年齢労働者の就労状況を知ることから始まる。それまでは,現場レベルで,何となく対策していたことについて,現状の客観的な情報を収集し,衛生委員会などで共有することで,根拠に基づいた効果的な活動を行うことができる。下記に把握すべき事項を挙げる。

・高年齢労働者の人数,雇用形態

・過去の労働災害の状況(高年齢労働者に多く発生している災害はないかを確認する)

・高年齢労働者のいる職場の作業環境(騒音,温熱,化学物質の使用など)

・高年齢労働者の作業内容(重量物運搬,速いスピードでの作業,高所への昇降,車の運転など)

・高年齢労働者の健康状況(健康診断受診状況,生活習慣病やがんなどの有病率)

以上の情報を整理し,産業保健スタッフだけでなく,衛生委員会などを通して経営層にも情報を共有することで,効果的な対策を行うための第一歩となる。

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