足底腱膜炎はスポーツ障害として論じられることが多いが,通常の外来診療では中高年以降(特に肥満例)に多く発症する。米国の報告では10人に1人は足底腱膜炎の疼痛に悩まされたことがあるとされている1)。好発年齢は40代から60代の間で,30代では稀である。肥満・長距離歩行や硬い路面で立っているような職業の人々に多く生じるとされている2)。手術例をみると長距離ランナーが手術に至ることが多いようである3)。また,踵骨棘と足底腱膜炎との関係では,有症状の例に踵骨棘が多くみられるとの報告のためheel spur syndromeと呼ばれることもある。しかしながら,一般成人の有症状例で骨棘のある例は75%,無症状例では63%と有意差はなく,名称から誤解されているので,骨棘を切除すれば治癒するというわけではない4)。
足底腱膜は踵部の内底側から始まり母趾から小趾へ広がり屈筋腱と同じ部位へと停止する。足底腱膜の弾力性は4%でありそれほどの弾力性はない。屍体実験上では100Nの張力で破断されると報告されている5)。踵骨部での連結は,windlass mechanismでの張力を受ける部位の中では最も弱い連結であるため,この部位での炎症が生じやすいと考えられる。
ストレッチは足底腱膜炎における典型的な初期治療であるとされている。間歇的なストレッチと持続的なストレッチともに有効である6)。
消炎鎮痛薬については,装具などとの併用では有効との報告があるが,単独での有効性については確立されていない。
装具についてはheel cup式のものが欧米では推奨されていて,シリコン製が良いとされている7)。
副腎皮質ホルモン薬の注射については有効であるが,踵部脂肪織の萎縮や足底腱膜の断裂などの合併症が報告されている8)。なお,注射する部位は足底腱膜起始部の上層部(皮膚表面に近い部分)にすべきとされている。
最近では体外衝撃波治療(extracorporeal shock wave therapy:ESWT)が行われている。ESWTは88%の症例に有効との報告もある9)。治療費などから考えると,3,4種類の治療を3カ月以上行っても無効である例に適応があるとされている。