外傷性疾患に対して桂枝茯苓丸・桃核承気湯などの駆瘀血剤を使用すると有効であるとされている。打撲に使用する駆瘀血剤の代表として桃核承気湯,桂枝茯苓丸,治打撲一方,通導散などがあげられる(表)。
今回は,筆者がよく使用する治打撲一方を紹介する。この漢方薬は,比較的証にとらわれずに使用できる印象がある。打撲による腫れ・痛みに効果があり,処方名はこの薬効に由来する。戦国時代の軍医達が考案,経験して秘伝としていたものといわれる(本朝経験方)。
打撲,捻挫などによる患部の腫脹や疼痛に使用するが,打撲に起因する陳旧性の症状にも効果があるといわれる。したがって,なかなか良くならない打撲後の慢性痛などにも使用される。その場合は,効果を高めるために修治ブシ末を加えることもある。
構成生薬は,川芎,樸樕,川骨,桂皮,甘草,丁子,大黄からなる。大黄が含まれているため,抗炎症作用とともに外傷後に起きる便秘を防ぐ効果もある。逆に打撲の症状が改善する時期には軟便となることがあるので,それが投薬を止める指標になる。
注意点としては,頭部打撲の急性期には使用しないほうがよいといわれている。
体格,体力が充実して便秘傾向がある実証の人には通導散や桃核承気湯が推奨される。しかしながら,桃核承気湯には打撲の保険適応はないので注意が必要である。冷え症や更年期障害などを指標に桂枝茯苓丸を選択する場合もある。