No.5128 (2022年08月06日発行) P.64
大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)
登録日: 2022-07-25
最終更新日: 2022-07-25
先日、薬剤師を対象とした学会で講演の機会を頂いた。テーマは「患者から健康食品を使ってみたいと聞かれたら、どうしますか?」であった。そのときに使ったスライドの1枚がこちらである(図)。趣旨としては「健康食品を使ってみたいのですが……」と聞いてくる患者がいたとき、その利用する目的や理由は人によって異なることを示している。さらに、質問された健康食品(What)の成分に関する科学的知見を情報提供することが重要であることに異論はないが、それだけで終わりにするのではなく、健康食品を利用してどうなりたいのか(How)、何故そのように考えたのか(Why)についても丁寧に聞き取りをしてほしい旨をお伝えした。そして、場合によっては健康食品を利用せずに患者の不安や悩みを解決できる可能性があることも付け加えた。
講演終了後、座長から今後の薬剤師業務や薬局機能に求められている“対物から対人”の方向性に合致する内容とのコメントを頂戴した。厚生労働省のサイトをいろいろと調べてみると、2015(平成27)年に「患者のための薬局ビジョン」が策定され、「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へと銘打ち、健康サポート薬局制度が定められた1)。さらに今年に入って、そのための具体的なアクションプランとして対人業務の充実化が示されている2)。
もともと健康食品と医薬品との相互作用などについては、薬剤師が圧倒的な知識量を持っており、さらに“対物から対人”という流れの中で、健康食品をはじめとした補完代替療法に関する相談窓口として薬剤師(薬局)が担う役割は大いに期待できると個人的に感じた次第である。
【文献】
1)厚生労働省:患者のための薬局ビジョン. 2015(平成27年)10月23日.
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000102179.html
2)厚生労働省:薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ.
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23780.html
大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法㉜]