介護人材不足が深刻な状況にあるわが国では、介護の質、生産性の向上、現場の働き方改革につながるよう、専門資格の有無を問わない『介護助手』を導入する施設が増えている。それでは、介護助手を導入することにより、介護の現場ではどのような効果が見られたのであろうか。
筆者が参画した2020年度厚生労働省老人保健健康増進等事業「介護老人保健施設等における業務改善に関する調査研究事業」によると、60歳以上の高年齢介護助手導入の理由は「介護職員の労働環境改善のため(残業時間の削減・有給休暇の取得率向上等)」「介護職員と介護助手の役割分担により、介護職員のケアの質を向上させるため」がそれぞれ73.9%、72.5%と7割を超えていた。
通常の業務別担当者について、「高年齢介護助手」が担当している割合が最も高かったのは「居室や施設の清掃、備品の準備・片づけ・補充作業等」で75.4%、ついで多かったのは「ベッドメイキング」56.3%、「洗濯、洗濯物の回収・配布」52.4%であった。
業務別の人手の状況について、そもそも「足りていない」が半数を超えたのは、「居室や施設の清掃、備品の準備・片づけ・補充作業等」「起床や就寝時の声掛け・見守り」「ベッドメイキング」「洗濯、洗濯物の回収・配布」「食事の配膳・下膳」「施設内外での移動補助(車いすでの移動補助を含む)」「利用者の見守り・傾聴(話し相手)」「イベントやアクティビティの補助」「消毒作業等の感染症対策」であった。
高年齢介護助手雇用当時の影響について、「全体的な業務負担感」「全体的な業務の量」はプラスに働いた(減少していたと思う)と回答した割合が、ともに70.0%と多かった。また、「介護の専門性を活かした業務に集中できるようになった」「普段の業務における気持ちのゆとりができた」は50%近くに上った。一方、マイナスに働く影響があったと回答した割合はほとんどなかった。
概して、介護助手の導入は現役介護職員のニーズにあった業務を担うことにより、その業務負担の軽減と専門業務への集中に寄与することが示唆された。次号では、こうした介護助手の効果について、さらに多面的に紹介したい。
藤原佳典(東京都健康長寿医療センター研究所副所長)[高齢者就労][健康]