灰本らによれば,五苓散は「雨の前に悪化する頭痛」の約9割に有効である。また,雨の前日に頭痛が「悪化しない人」に対して「悪化する人」では約16倍の有効率であるといわれている2)(表)。この結果について著者らは「気圧が下がり始めると,ミクロレベルの水(組織液など)が脈管から漏れ始めて,ミクロの浮腫を形成し,これが重く締め付けられるような頭痛を発生させるのであろう」と考察している。つまり,五苓散が効く頭痛の本態は「気圧低下による脳浮腫」と言い換えることができる。
この考察は現時点で推測の段階ではあるものの,「雨の前に悪化する頭痛に対して五苓散を投与すると有効率が高い」という結果は,実臨床において有用である。
五苓散は発作時の頓服だけでなく,日常から服用することで頭痛の予防薬としての使用が可能である。一般的に五苓散は,重い鈍痛(緊張型頭痛)に効果があることが多いが,雨の前に増悪する頭痛(気圧低下に伴う頭痛)であれば,拍動性の鋭い痛み(片頭痛)に対しても有効であるため,トリプタン系薬剤の減量を図れることがある3)。
気圧低下に伴う頭痛に対して五苓散の効果が不十分な症例を経験することがある。このようなときは,投与量を増量すると有効な場合がある4)。具体的には頭痛を自覚したタイミングで,五苓散を追加で服用させる。この発作時の頓服による追加という方法は,特に若年者(〜中年)に有効な場合が多い。
まとめ
気圧低下に伴う頭痛に五苓散は有効
この場合,緊張型頭痛だけでなく片頭痛にも有効
五苓散は用量依存性に効果を発揮する場合があるため,強い症状に対し頓服の追加投与で頭痛の軽減が図れる