赤ニキビ(尋常性ざ瘡)は毛包に貯留した皮脂にアクネ菌が感染し炎症を起こすことで生じる,非常にありふれた疾患である。赤ニキビは顔面に好発し赤く目立つため,容姿を気にかける思春期患者にとって深刻な問題となり得る。
アクネ菌を抑制できれば炎症は軽快し赤みも和らぐため,治療はもっぱら抗生剤の外用や内服が選択される。しかし本症例のように,抗生剤を中止すると赤ニキビが再燃してくることは珍しくなく,かといって長期間抗生剤を使用することは耐性菌の問題から勧められるものではない。このため,しばしば赤ニキビは我々臨床医を悩ませる疾患にもなる。
黄連解毒湯は,主薬の黄連に黄芩,黄柏,山梔子を加えた4つの生薬で構成される。黄連の主成分であるベルベリンには抗菌作用があり,赤ニキビの原因であるアクネ菌に対しても優れた抑制効果があることが知られている。実際に,抗生剤によりいったん軽快したが再び悪化してきた赤ニキビ患者に対して証(漢方医学的に分類した様々な体質)に関係なく黄連解毒湯を投与したところ,8割以上の患者で赤ニキビの再燃を抑制できた1)(表)。
赤みを繰り返すニキビ患者には黄連解毒湯の処方を一考してみると良いだろう。黄連解毒湯のみの治療でも,ある程度赤ニキビの改善が見込めるが,やはり抗生剤と比べると即効性に欠ける。したがって,まず抗生剤で速やかに赤みを軽減させ,赤みを再燃させない目的で本剤を長期内服させるのが実践的かもしれない。
長期服用については,黄連解毒湯は体力のない者には適さないとされるが,赤ニキビは概して体力が充実している青年期に好発するため,長期間の使用も大きな問題はないようである。
まとめ
赤みを繰り返すニキビ患者には黄連解毒湯の処方の検討を
黄連解毒湯は,体力のある青年期の患者ならば長期服用も可能