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【識者の眼】「コミュニティホスピタル」武藤正樹

登録日: 2026.03.30 最終更新日: 2026.04.03

武藤正樹 (社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事)

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以前(No.5315No.5318)より、かかりつけ医や総合診療専門医をめぐる話題を取り上げている。1980年代後半の米国への家庭医療留学の体験、家庭医に関する懇談会の挫折、そして19番目の専門医として総合診療専門医が誕生するまでの一連の流れを紹介してきた。

最近、この総合診療専門医が注目されている。特に全国8068病院のうち約7割を占める200床未満の中小病院では、総合診療専門医が引っ張りだこだ。その背景には、中小病院の経営危機がある。こうした病院を立て直すには、幅広い診療能力を持つ総合診療専門医が適しているからだ。これらの病院がこれからめざすべき姿は、地域において「かかりつけ医機能」を果たす地域密着型の病院である。私はそうした病院を「コミュニティホスピタル」と呼びたい。

コミュニティホスピタルは地域に密着し、地域とともに歩む病院であり、そこでは総合診療専門医の存在が不可欠だ。総合診療専門医は、外来、在宅、病棟を横断して患者を診ることができる。まさにコミュニティホスピタルに欠かせない存在である。

私が代表理事を務める一般社団法人コミュニティ&コミュニティホスピタル協会(以下、C&CH協会)では、コミュニティホスピタルを「総合診療を軸に超急性期以外のすべての医療、リハビリ、栄養管理、介護などのケアをワンストップで提供する病院」と定義している。地域では高齢化が進み、複数の疾患を抱える高齢患者が増えている。医療だけでなく介護を必要とする患者も多く、さらに認知症の患者も急増している。

こうした患者が抱える様々な課題に地域の中で向き合うのが総合診療専門医である。2018年4月に新専門医制度がスタートし、総合診療科は19番目の基本領域として位置づけられた。しかし、専門医としての具体像がいまだ十分に共有されていないこともあり、その普及は必ずしも順調とは言えない。総合診療科を専攻する医師は増加傾向にあり、2025年度の採用は約300人となった。ただしこれは、採用された専攻医全体の3%程度にとどまっている。

C&CH協会は、こうしたコミュニティホスピタルと、そこで活躍する総合診療専門医を支援することを目的に2022年に設立された。既にいくつかの地域では、C&CH協会の支援によってコミュニティホスピタルが立ち上がり、成功事例も生まれている。

たとえば、東京都台東区にある同善病院(45床)は、回復期リハビリテーションと機能強化型在宅療養支援病院の機能を持ち、クリニックも併設している。しかし一時期、医師やスタッフを安定して確保できず、また、提供する医療が地域ニーズと乖離し、経営が悪化したこともあった。そこで2013年から経営体制を一新し、リハビリ機能を再強化した。併設クリニックには総合診療専門医を院長として迎え、地域ニーズに応える体制を整えた。さらに2022年4月には、在宅医療の経験を持つ総合診療専門医3名を迎え、地域貢献の一環として「あおぞらカフェ」も開設し、地域住民に開かれたコミュニティホスピタルへと発展している。

C&CH協会では、このような総合診療専門医の養成や派遣、さらにはコミュニティホスピタルの仕組みづくりの支援を行っている。総合診療による病院経営改善に関心のある方は、ぜひC&CH協会のWebサイトを訪れて頂きたい。

武藤正樹(社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事)[総合診療専門医][コミュニティホスピタル

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