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病院経営の教科書【第2版】 数値と事例で見る中小病院の生き残り戦略

統計データが導く「選ばれる病院」になるための経営戦略

定価:5,280円
(本体4,800円+税)

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監修: 大石佳能子(株式会社メディヴァ・コンサルティング事業部)
著: 小松大介(株式会社メディヴァ・コンサルティング事業部)
判型: B5変型判
頁数: 372頁
装丁: カラー
発行日: 2021年09月16日
ISBN: 978-4-7849-4511-5
版数: 第2版
付録: 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます)

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「もう駄目だ! お金が底をつく」「スタッフが大量に離職してしまった」「古い病棟を建て替えたいが、財務が悪化して手が打てない」……ぎりぎりの経営を強いられている中小病院をサポートし、その復活の過程に携わってきた著者の体験から生まれた実践的テキスト。最新の統計データに基づく全面改訂版です
病院経営を取り巻く環境の変化を、統計データを用いてカラーグラフでわかりやすく視覚化。独自のデータ分析により、安定経営の指標となる数値を明示しました。
中小病院が生き残るための戦略を、豊富な事例とともに解説。機能分化が進む今後の病院経営のモデルを提示しました。

第1章 病院経営を取り巻く環境
1. 病院経営の鍵となる指標
2. 病院財務の概観
3. 病院経営のマクロ統計
4. 人事・労務の実態
5. 設備投資の考え方
6. 競争・連携相手の動きを読む
7. 患者の構造変化
8. 人口動態と国民医療費

第2章 病院経営の戦略
1. 典型的な経営戦略失敗のプロセス
2. 経営戦略の基本類型
3. 集中戦略としての機能分化とその効果
4. 経営戦略策定の基本的なフレームワーク
5. 経営を成功に導くための戦略構築の視点

第3章 病院経営の実践
1. 経営戦略
2. ガバナンス
3. 財務
4. 組織
5. マーケティング
6. 人事・労務
7. 業務

※カラー372ページ、無料の電子版が付属。

目次

第1章 病院経営を取り巻く環境

1. 病院経営の鍵となる指標
1.1 病床稼働率は平均80%強
 病床稼働率と病床数の不思議な関係
 採算ラインを維持するには
1.2 初診率は11%
 初診率からわかること
 診療科別の初診率
1.3 入院ルートは外来/在宅40%・救急10%・紹介50%
 入院ルートの分析からわかること
 各ルートの入院患者を増やすには
1.4 外来診療圏は5 km、入院診療圏は10 km
 診療圏調査の基本的な考え方
 急性期病院・ケアミックス病院における診療圏の考え方
 専門病院における診療圏の考え方
2. 病院財務の概観
2.1 経常利益率2%、借入金は売上の3分の1
 貸借対照表の見方
 損益計算書の見方
2.2 病床稼働率の損益分岐点は80%
 入院診療の損益分岐点の算出法
 病院種類・病床規模別に見た入院損益分岐点
2.3 外来患者数の損益分岐点は病床の1.3〜2.7倍
 外来診療の損益分岐点の算出法
 病院種類別に見た外来損益分岐点
 病床規模別に見た外来損益分岐点
2.4 借入金は売上の1.5倍が限界
 病院経営は先行投資型ビジネス
 借入金の限界シミュレーション
3. 病院経営のマクロ統計
3.1 民間病院の3割は赤字
 「病院運営実態分析調査」に見る赤字病院の比率
 「病院経営管理指標」に見る赤字病院の比率
3.2 リハビリ・手術・DPCは年率5%の伸び
 入院医療費の動向
 入院外医療費の動向
3.3 全病床の4分の3が診療報酬包括化病床に
 出来高払いから包括払いへ
 包括払いの基本的な考え方
 包括化病院・病床の広がり
 診療報酬包括化が病院経営に与えるインパクト
3.4 医療費増加率は患者増加率を下回る
 医療費増加と患者数の関係
 診療報酬が医療費に与える影響
 今後10年間、引き続き医療密度を上げる努力が求められる
 2025年〜2040年以降、本当のマイナス改定が始まる
4. 人事・労務の実態
4.1年間で勤務医2割増、看護師4割増、PT 2.6倍
 病院の従事者数の推移
 医療専門職の働き方の変化
 職種別の供給見通し
4.2 医師当たり患者数は20年間で3〜4割減
 医師の需給見通し
 看護師の需給見通し
4.3 医師の年収は10年間で2%アップ
 医療従事者の給与水準
 医師の給与が上がらない理由
4.4 医療職の離職率は平均15%
 医療職の人材流動化
 離職対策から人材戦略へ
5. 設備投資の考え方
5.1 CTは2年、MRIは5年で採算が合う
 CT・MRIの導入の現状
 高額検査機器の採算性
5.2 病院の耐震化はまだ75%
 耐震化を進めるための取り組み
5.3 病院建設単価は9年で53%上昇
 建設単価の推移
 建設コスト上昇が病院経営に与えるインパクト
6. 競争・連携相手の動きを読む
6.1 病院数は20年で11%減(50床未満は37%減)
 規模別に見た病院数の推移
 種類別に見た病院数の推移
6.2 一般病床の54%がDPC病床に
 DPC/PDPS制度のポイント
 拡大するDPC病床
 DPC制度と急性期病院の将来
6.3 病院の開設は2割減、廃止は横ばい
 病院の開設・廃止の動向
 最近10年間の傾向分析
 病院の新規参入・撤退をどう考えるか
7. 患者の構造変化
7.1 入院受療率は30年で12%減(外来受療率は微増)
 年齢別の受療率
 延べ患者数の推移
 高齢者の受療率の推移
 傷病別受療率の推移
 受療率から見た患者動向の変化(まとめ)
7.2 主要死因の死亡率は各世代で減少中
 疾病構造の変化と医療政策
 世代別に見た主要死因の死亡率
7.3 肝臓・肺・食道がんの生存率は 15年間で5割以上改善
 部位別・年齢別がん罹患数
 がんの5年生存率
8. 人口動態と国民医療費
8.1 高齢化によって看取り場所が30万人不足
 世代間の支え合い構造の崩壊
 独居高齢者の増加
 看取り数の急増
8.2 認知症高齢者は20年間で3割増
 認知症患者数の推移
 認知症高齢者向けの施策
 認知症ケアの社会的資源をどう確保するか
8.3 出生数は激減したが1施設当たりでは増加中
 少子化の現状
 1施設当たりの出生数はむしろ増加
8.4 医療費の38%は税金から
 医療費の財源
 国の予算に占める医療費の動向

第2章 病院経営の戦略

1. 典型的な経営戦略失敗のプロセス
 経営陣の慢心(甘い見込み)
 エース医師・看護師の退職
 人心荒廃と設備の老朽化
 無理な設備投資
 キャッシュフローの行き詰まり
2. 経営戦略の基本類型
 経営戦略とは何か
 差別化戦略
 コスト・リーダーシップ戦略
 集中戦略
3. 集中戦略としての機能分化とその効果
 二次医療圏別の機能分化指数
 機能分化が経営状況に及ぼす影響
4. 経営戦略策定の基本的なフレームワーク
 3C分析
 SWOT分析
 STP-4P
5. 経営を成功に導くための戦略構築の視点
 自院が置かれている状況を客観的に把握する
 患者ニーズと制度の流れを読む
 いくつかの戦略オプションを構築する
 投資対効果・費用対効果・リスクを把握する
 経営者自身が信じ、やりきることができる戦略を選択する


第3章 病院経営の実践

1. 経営戦略
1.1 高齢者病院から産婦人科病院への転換
 産婦人科への集中戦略を決意
 経営陣の本気度がスタッフの意識を変えた
 5年かけて全病棟を転換
1.2 一般病院からコミュニティホスピタルへの転換
 地域包括ケアの中核病院を目指す
 在宅医療を担う医師を確保する
 在宅医療の導入による増収効果
1.3 精神科病院の改革
 職員に経営状況を開示する
 一般病院との連携、アウトリーチ部門の強化
 医師の採用、リハビリをはじめとする各部門の強化
 10年間で収益が10億円増
 精神科病院が取り得る戦略のオプション
1.4 効果的な新棟建設計画
 市場ニーズを捉えた明確な戦略
 戦略に基づいた、メリハリのある設計方針
 戦略を実現するための人材・業務ノウハウ
 無理のない確実で余裕のある資金計画
 建設計画の実務を担う人材の確保
1.5 診療報酬制度の方向性を見通す
 2025年に向けた診療報酬改定の基本的な考え方
 診療報酬改定の最近のトピックを振り返る
 診療報酬改定の先を読む
1.6 多様な経営戦略
 水平展開によるエリア拡大戦略
 垂直統合による地域ドミナント戦略
 介護・住宅事業への進出
 超大型医療機器への投資による差別化戦略
 海外への事業展開
 医療技術のノウハウ化とフランチャイズモデル
2. ガバナンス
2.1 ガバナンスを改革することの重要性
 兄弟喧嘩がガバナンスの奪い合いに発展したケース
 創業者から息子達への権限委譲がスムーズでなかったケース
 経営不振により第三者に病院運営を乗っ取られかけたケース
 ガバナンスの重要性
2.2 理事会・社員総会の運営
 手続きを怠ると後でトラブルのもとに
2.3 病院長が持つべきリーダーシップ
 リーダーシップのスタイル
 リーダーを形づくる要素
 ボス型リーダーと調整型リーダー
3. 財務
3.1 損益計算書と貸借対照表
 財務諸表の確認を怠った事例
 損益計算書の見るべきポイント
 貸借対照表の見るべきポイント
 時系列比較とベンチマーク比較
3.2 KPIによる経営管理
 KPIを設定することの意味
 KPIを設計する際の考え方
 KPIの運用例
3.3 銀行取引のコツ
 医療機関向け融資というビジネス
 銀行の支援を引き出すにはコツがある
3.4 資金調達の実際
 補助金・助成金
 融資
 リース
 診療報酬債権の流動化
 資産売却・不動産活用
 病院債
3.5 経営再建の手法
 返済のリスケジュール、土地の売却
 メインバンクによる金融支援
 民事再生
 経営再建の手法
 財務状況に合わせた再建手法を選択する
4. 組織
4.1 戦うチームへの変貌
 誰も責任を取らず、業務が停滞してしまった
 院長の意識改革からスタート
 経営体制の改革
 組織の分権化
 経営状況の開示
4.2 組織の骨格作り
 組織が組織として機能していない病院の事例
 部署ごとの責任を明確にし、会議で確認する
 組織図の階層が意味するもの
 組織作りのポイント
4.3 組織文化の改革
 拡大移転したものの、伸び悩んでいるケアミックス病院の事例
 理念・規範・戦略を再定義する
 まずは幹部職員の考えを統一する
 次にスタッフへの浸透を図る
 改革の効果は非常にゆっくりと現れる
5. マーケティング
5.1 マーケティングにおける現状把握
 マーケティングの基本は現状把握から
 外来患者の受診行動
 入院患者の受診行動
 健診受診者・在宅患者の受診行動
 マーケティングデータの取り方
5.2 マーケティングの実務
 広告宣伝活動
 広報活動
 院内における広告・広報活動
 患者へのマーケティング活動
 連携先・事業所へのマーケティング活動
 従業員向けマーケティング活動
 患者の受診行動プロセスとマーケティング活動
5.3 Webマーケティングの効果
 webマーケティングの成功例と失敗例
 webマーケティングの基本的な考え方
5.4 自己負担の価格
 自己負担の差が集患に影響した事例
 保険外自己負担の実態
 医療機関の収益と患者自己負担の関係
6. 人事・労務
6.1 問題スタッフへの対応
 問題スタッフを放置せず、早期に対応を検討する
 就業規則と雇用契約を確認する
 本人への指導は人格否定にならないよう、問題行動に焦点を当てる
 指導内容は書面で残し、本人の言い分も記録する
 解決を急がず、本人と将来の見通しを共有し、納得してもらう
6.2 採用プロセスの強化
 採用を強化するための現状分析
 採用プロセスにマーケティングの考え方を導入する
 今いるスタッフを大事にすることが、採用強化につながる
6.3 人事考課の基礎
 人事考課制度の構築
 人事考課制度の導入と運用上の注意
7. 業務
7.1 会議の運営
 組織が動かない原因は会議にあった
 会議の運営を改善する
 上手な会議運営は経営効率を上げる
7.2 労働生産性の向上
 労働生産性とは何か
 労働生産性分析の考え方
 労働生産性のベンチマーク
 非生産性の要因
 労働生産性を向上させるための手法
7.3 購買管理の実践
 交渉の“カード”を用意する
 値引き交渉のポイント
7.4 被災からの復旧とBCPの策定
 病院が浸水、孤立してしまった
 復旧に向けた課題マップを作る
 復旧の鍵となる課題
 事業継続計画(BCP)立案のポイント
7.5 不正を防ぐ内部統制
 事務長が横領をしていた
 業務上横領の手口
 不正なお金の動きを見逃さない
 ハラスメント対策
 内部統制のチェックリスト

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序文

 これからの中小病院の「選ばれる方法」として確実なのは「コミュニティ・ホスピタル」になることだと筆者らは考えています。コミュニティ・ホスピタルとは、これからどんどん高齢化が進む日本において必要となる地域包括ケアシステムの中核的な役割を果たす病院を指します。多くの疾患を抱えた高齢者を診るべく、総合診療や在宅医療を自らか担うか、もしくは地域のそれらの機能をバックアップする機能を持つ病院です。このような機能を持つ病院は、たとえ小さくても地域に不可欠なインフラとして、これからの厳しい時代にも生き残っていけると信じています。
 全病院の7割は200床未満の中小病院であり、しかもその85%は民間病院です。何代にもわたって、地域医療の担い手として貢献してきた歴史があるのです。同じく中小の公立病院も、行政によって作られた地域医療の担い手でした。地域で不可欠な社会インフラとして生き残ることを「覚悟」を持って決めた経営者の皆様に、この本が一助となることを願ってやみません。(第2版のまえがきより)

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