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2型糖尿病の分子機構と治療戦略 [内科懇話会]

No.4753 (2015年05月30日発行) P.42

司会: 片山茂裕 (埼玉医科大学かわごえクリニック院長)

演者: 門脇 孝 (東京大学糖尿病・代謝内科教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-17

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  • 【司会】 片山茂裕(埼玉医科大学かわごえクリニック院長)

    【演者】 門脇 孝(東京大学糖尿病・代謝内科教授)

    糖吸収・排泄調節系に分類されるSGLT2阻害薬については,日本糖尿病学会および日本糖尿病協会のホームページに「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」が掲載され,脱水,インスリンやSU薬と併用した場合の重症低血糖,高齢者への投与などについて注意が喚起されている

    カロリー制限,運動,アディポネクチンが長寿の源と考えられる

    アディポネクチン受容体作動薬(AdipoRon)には,骨格筋や肝臓での糖・脂質代謝改善効果,脂肪組織の炎症抑制効果や血管内皮機能改善効果などがあり,肥満に伴う諸疾患の改善や健康長寿に資する可能性がある

    ◉ 経口血糖降下薬とその特徴

    スルホニル尿素薬(SU薬)は最も古くから使用されている経口血糖降下薬です。ビグアナイド(BG)薬は長い間使われませんでしたが,乳酸アシドーシスを起こしにくいタイプのBG薬が使われるようになりました。その後,α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI),チアゾリジン薬,グリニド薬が使用され,そして現在,患者の50~60%に使われているのがDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)阻害薬で,2014年4月にはSGLT2(sodium-glucose co-transporter 2)阻害薬が上市されました。現在,日本糖尿病学会(JDS)では,経口血糖降下薬をインスリン抵抗性改善系,インスリン分泌促進系,糖吸収・排泄調節系の3つのカテゴリーにわけています(図1)。

    ▼インスリン抵抗性改善系

    本系の薬剤は皮下脂肪に発現しているPPAR(peroxisome proliferator-activated receptor)γを強く活性化し,皮下で多数の小型の脂肪細胞をつくります。内臓脂肪も受動的にエネルギー流入が減って小型となり,アディポネクチン分泌が亢進します。このように,脂肪細胞に働くことで脂肪細胞の質を良くし,骨格筋・肝臓でのインスリン感受性を改善するのがチアゾリジン薬です。しかし,チアゾリジン薬には体液貯留による浮腫(心不全には禁忌),食欲亢進による肥満の助長,あるいは骨髄の間葉系細胞のPPARγに作用し,骨芽細胞になるはずの細胞が一部脂肪細胞に分化することによる,閉経後の女性における骨量低下・骨折増加などの副作用が知られています。そこで,チアゾリジン薬は,インスリン抵抗性が強かったり,心血管イベントを1度起こした人の血管保護をめざした二次予防などに用いられます。BG薬は,肝臓で糖新生を抑制する薬剤で,筋肉あるいは脂肪細胞には働きません。乳酸アシドーシスの問題を除くと比較的安全に使える薬剤です。

    ▼インスリン分泌促進系

    従来,SU薬とグリニド薬が使われていました。インスリン分泌を促すという点では良い薬ですが,グルコースが正常になってもインスリンを分泌し続けるため,低血糖が起こりやすいのです。低血糖が起こると食欲が亢進して,体重増加も起こしやすく,低用量で用いられたり,用いる頻度も減ってきました。一方,インクレチン関連薬は低血糖や肥満を起こしにくいことから,効果が期待されています。インクレチンはDPP-4により分解されます。DPP-4を抑制することでGLP-1(glucagon-like peptide-1)やGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)のレベルを上げて,インスリン分泌を促進しようというのがDPP-4阻害薬です。一方,GLP-1受容体作動薬はDPP-4によって分解されにくいようにアミノ酸を変えたGLP-1の誘導体です。血糖値を下げますし,体重を下げる作用があります。しかし,注射薬であることから,経口薬であるDPP-4阻害薬がより多く使われています。

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