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【識者の眼】「職場不適応の背後に発達障害の可能性」山本晴義

No.5063 (2021年05月08日発行) P.99

山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)

登録日: 2021-04-20

最終更新日: 2021-04-20

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年度の始めは、就職や異動が多く、なかなか新しい環境になじめず不適応に陥ることがある。そうした不適応は、ただ単に不安や不慣れだけが理由とは限らない。

発達の偏りがあるいわゆる発達障害のある方は、異なる環境に置かれた場合、その環境がその人に合わない場合、もともとの発達障害に加えて、うつ病などの二次的な情緒や行動の問題が起きることがある。就職先や配属先の仕事が自分の発達障害の特性に向いていなかった場合、当然の事ながら失敗の連続となる。成功体験を積むことなく、逆に、自信の喪失ばかりになってしまうことも多いだろう。

また、発達障害の中にはコミュニケーションを上手にとったり、相互的なやりとりが難しい場合もある。報告・連絡・相談のいわゆる報連相がそもそもできないことが多く、失敗をしても相談をしたり、アドバイスを受けることができないケースも見受けられる。そのようなことが続くとストレスもたまり、周囲から否定的な目で見られることも重なり、最終的にうつ病などを発症してしまうこともある。 さらに、仕事の継続が困難になることで転職を繰り返したり、失職してしまう等、社会的・経済的に不安定な状況に陥ってしまうのである。

発達障害のある方は、日常的に疲れやすさを抱える方も少なくない。それぞれ障害によって症状は違うものの、たとえば、感覚の過敏さ、活動量の多さ、睡眠が上手にコントロールできない、自分で疲れに気が付かない、などの疲れやすさの原因となるものが多くみられる。

発達障害の中でも自閉症スペクトラムの方には、一般的には気にならない音や光(空調の音や蛍光灯の光)に非常に敏感な方がいる。一見、普通のオフィスであっても集中しにくく、疲れやすいのである。

また、ADHD(注意欠如・多動性障害)の方にはエネルギッシュで活動的な方も多く、疲れやすい。大人のADHDの場合、行動面では落ち着いていても、頭の中では思考が次から次へと浮かんでは消えたりすることもあり、やはり他の人にはわかりにくい疲れがある。

本人の不適応や困り感がどこからきているのかがわかれば、対応もある程度可能になる。問題が起きているとき、こうした発達障害の存在を視野にいれることが必要である。

山本晴義(労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)[発達障害][職場不適応]

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