外耳道は,外側の軟骨部外耳道と深部の骨部外耳道にわけられる。外耳道湿疹の首座である軟骨部外耳道皮膚には,耳毛・毛囊や皮脂腺,耳垢腺があり,角化物や老廃物は外耳道入口部側へと排出される自浄作用を有している。一方で,耳垢や入浴・水泳の際に入る水が気になり,指,綿棒あるいは耳かきにより,定期的にあるいは習慣性に外耳道を触ることは稀ではない。この行為が外耳道皮膚に対する慢性刺激となり,皮膚の肥厚,発赤,びらん,痂皮や落屑,滲出液の付着をきたし,耐え難いかゆみを主症状として外耳道湿疹が形成される。このかゆみが耳掃除を繰り返し,慢性化の要因となる。
外耳の慢性的なかゆみと過度の耳掃除習慣があれば本症を疑う。耳掃除の頻度,使用器具および過度の耳掃除の要因を明確にする。刺激となりうる外因(耳栓・補聴器・挿耳型ヘッドホン・整髪料・水泳),アレルギー疾患や基礎疾患(糖尿病・免疫抑制薬や副腎皮質ステロイドの使用等)の有無を確認する。
好発部位である耳介や外耳道入口部は,死角にならないよう耳鏡を使用せずに,軟骨性外耳道から鼓膜までは,拡大耳鏡や顕微鏡を用いて観察する。痂皮・落屑の付着,発赤,びらん,滲出液硬化物の有無,鼓膜穿孔や耳漏の有無を評価する。
痂皮に黒色ないしは白色の膜様物を認めれば真菌感染を,膿性耳漏および耳介牽引痛あるいは耳珠圧痛を認めれば細菌感染の合併も考え,菌培養検査を行う。
治療の前提は,過度の耳掃除習慣を断つことに尽きる。この習慣を継続する限りかゆみは軽快しないこと,耳掃除でかゆみが消失しても効果は一過性であり,皮膚病態の悪化からかゆみの再燃へと悪循環に陥ることを,丁寧に説明し理解を得ることから始まる。
外耳を丁寧に清掃し,副腎皮質ステロイド軟膏塗布および抗ヒスタミン薬内服を基本とする。ステロイド外用薬は,初期にⅠ群(strongest)を5~7日間,それ以後はⅢ群(strong)の軟膏を選択し,乱用および長期使用を回避する。通院は週1度とし,かゆみ・耳への接触習慣,外用薬の適切な使用および副作用を確認するとともに,病態評価を行う。かゆみが消失し皮膚病態が改善すれば,外用薬および内服薬の使用は中止とする。耳垢が蓄積しやすく気にしてしまう症例では,1~2カ月ごとに再診させ,耳垢があれば丁寧に清掃し,自分で耳を触らせないようにする。耳掃除は最小限度(2週1回以内)に徹底し,入浴の際に耳に水が入った場合にも,安易に綿棒を使用せず,気になる場合は綿栓をするよう指導する。
真菌や細菌感染合併が疑われる場合は,副腎皮質ステロイド軟膏は使用せず痂皮除去や耳洗浄にとどめ,菌培養検査の結果を待って抗真菌外用薬や抗菌耳科用液点耳を追加する。長期化する場合は,悪性外耳道炎,悪性腫瘍,Wegener肉芽腫等を鑑別する必要がある。
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