株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「臨床研究②─臨床研究論文の新たな評価指標“相対的インパクトファクター”」西﨑祐史

No.5146 (2022年12月10日発行) P.62

西﨑祐史 (順天堂大学医学部医学教育研究室先任准教授)

登録日: 2022-11-24

最終更新日: 2022-11-24

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

臨床研究論文の確立された評価指標のひとつとしてインパクトファクター(IF)があるが、引用頻度および傾向が、分野ごとに異なるため、異なる分野のジャーナルのIFが比較できないという最大の欠点がある。

諸外国に目を向けると、IFの欠点を補った臨床研究論文評価指標が開発されている。それは、フランスで開発されたSIGAPS (Systèmed’interrogation,de gestionet d’analyse des publications scientifiques)という計算ツールである。SIGAPSで計算されたスコアは、異なる研究分野のIFの比較を可能にするため、相対的IFと呼ぶことができる1)

SIGAPSスコア(相対的IF)の計算方法を紹介する。ある分野のジャーナルをThomson Institute for Scientific Information(ISI)に基づいた分類により、IFパーセンタイルでA〜Eランク(Aランクは90パーセンタイルを超える、Bランクは75〜90パーセンタイルに位置、Cランクは50〜75パーセンタイルに位置、Dランクは25〜50パーセンタイルに位置、Eランクは25パーセンタイルを下回る)に分類する。Aランクに分類されたジャーナルには8点が与えられる。Bランク以下のジャーナルは次に示す通りの点数が与えられる(B=6点、C=4点、D=3点、E=2点、分類不能=1点)。また、論文への貢献度(著者としての順位)に応じたスコアが重み付けとして付与される。具体的には、First authorの場合4点、Second authorまたはLast authorは3点、Third authorは2点、それ以外の順位の場合は1点が積算される2)

循環器領域の例を挙げてSIGAPSスコアを算出してみよう。European Heart Journal(Aランク)にFirst Authorとして掲載された場合には、SIGAPSスコアは8(Aランク)×4(First Authorの重み)=32点となる。また、整形外科・スポーツ医学領域を例とすると、Am J Sports Med(Aランク)にFirst Authorとして掲載された場合にも、SIGAPSスコアは8(Aランク)×4(First Authorの重み)=32点と、上記の循環器領域の例(European Heart Journal)と同点になる。European Heart JournalのIFの絶対値は、ある時点で、19.6点、Am J Sports MedのIFの絶対値は4.4点と、IFの絶対値の比較においては大きな差を認めるが、分野の違いを調整したSIGAPSスコア(相対的IF)で比較すると同等の価値となる。

臨床研究論文の評価指標は、絶対的IFを含めて、いくつかの方法が知られているが、異なる研究分野のIFを比較する際には、SIGAPSスコアリングシステムにより計算された相対的IFによる比較が一案であろう。

【文献】

1)Devos P, et al:Stud Health Technol Inform. 2003;95:721-6.

2)Ueda R, et al:Front Pharmacol. 2019;10:1228.

西﨑祐史(順天堂大学医学部医学教育研究室先任准教授)[臨床研究][臨床研究支援][総合診療]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top