後発医薬品(ジェネリック医薬品)の産業構造のあり方を検討してきた厚生労働省の検討会(座長:武藤正樹衣笠病院グループ理事)は5月22日、「少量多品目生産」と言われる非効率な生産体制の適正化や、企業統合などによる業界再編を求める報告書を取りまとめた。これを受け、厚労省は法改正も視野に検討を進め、「5年程度の集中改革期間」を設けて改革を実行する意向だ。
検討会は、医薬品の安定供給に関する厚労省の有識者検討会報告書(2023年6月)に盛り込まれた「後発品の安定供給を確保するためには、(少量多品目生産などの)産業構造のあり方そのものを見直していくことが必要」などの提言を受け、昨年7月に設置。
後発医薬品は、政府の旗振りにより使用割合が過去15年間で約35%から80%に急拡大した。しかし産業育成への政府の関与が不十分だったこともあり、小林化工の事案をはじめ品質管理を巡る不祥事が続発。後発医薬品の供給も3年にわたり不安定な状態が続いている。
後発医薬品企業約190社のうち100品目以上を供給する企業は約30社ある(図)。先発品も扱う企業を除き、主に後発品を扱う企業に限ってみると、取扱品目数がきわめて少ない企業ときわめて多い企業に分かれる傾向にある。出荷数量ベースで見ると供給数量が少ない企業が圧倒的に多く、取扱品目数が多い中で少量ずつ生産する「少量多品目生産」が広がっているという実態がある。
検討会の報告書は、後発医薬品産業の本来あるべき姿として①製造管理・品質管理体制の確保、②安定供給能力の確保、③持続可能な産業構造─を取り戻す必要があると強調。
持続可能な産業構造にするためには少量多品目生産を適正化し、生産効率を向上させる必要があるとし、企業間の品目統合と薬価削除による市場撤退のプロセスを簡素化することなどを求めている。
報告書はさらに、後発医薬品のビジネスモデルを転換し生産効率や収益性を向上させるためには、M&A(企業買収)、事業譲渡、企業統合、コンソーシアムなどによる業界再編の機運も高めていく必要があると指摘。「業界の中核を担う自覚のある企業」に対し業界再編の動きを牽引する役割を果たすよう呼びかけている。
厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の水谷忠由課長は「企業同士の統合やコンソーシアムが直ちに独禁法上問題になるという事態は想定しづらいが、企業にはそういう懸念もあると思う」とし、「厚労省の相談窓口を設置し、公正取引委員会への相談のサポートもできる環境を整備していきたい」との考えを示している。
【関連情報】
厚生労働省「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」報告書(厚生労働省ウェブサイト)
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