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ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)[私の治療]

No.5233 (2024年08月10日発行) P.47

吉田尚弘 (自治医科大学附属さいたま医療センター耳鼻咽喉・頭頸部外科教授)

登録日: 2024-08-09

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  • ANCA(anti-neutrophil cytoplasmic antibody)関連血管炎は,細小動脈や毛細血管などの小血管を主病変とし,血管性壊死性病変と高いANCA陽性率を特徴とする疾患である。ANCA関連血管炎性中耳炎(otitis media with ANCA-associated vasculitis:OMAAV)は,ANCA関連血管炎が原因と考えられる中耳炎を包括的にとらえた疾患概念である1)。ANCA関連血管炎による鼻,肺,腎などの全身症状を呈する前に耳症状を生じ,ANCA関連血管炎と診断される症例も多い。

    ▶診断のポイント

    抗菌薬,鼓膜換気チューブが奏効せず,進行する骨導閾値の上昇がみられる。鼓膜所見,標準純音聴力検査,ANCA抗体価,CTなどにより診断されるが,ANCA陰性例もある。鼓膜の血管怒張や外耳道後壁の腫脹には注意する。MPO-ANCA抗体陽性例の多くで中耳貯留液を認める。難聴に加えて,顔面神経麻痺,肥厚性硬膜炎,上気道病変,肺,腎疾患などの全身症状が経過中に出現することが多い。肥厚性硬膜炎の診断には造影MRIが有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    耳限局型か全身型か年齢,全身状態など総合的に判断して治療法を選択する。

    治療は寛解導入治療,寛解維持治療にわけられる。寛解導入治療には主としてグルココルチコイド(GC)+シクロホスファミド(CY),GC+リツキシマブ(RTX),寛解維持治療にはGC+アザチオプリン(AZA)などが投与される。

    近年,補体C5a受容体拮抗薬であるアバコパンが開発された。寛解導入治療にCYまたはRTXを用いる場合に,高用量GCよりも有意なアバコパン併用効果が報告されているが,今後の使用例の集積も必要である2)

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