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【識者の眼】「後発医薬品があるのに長期収載品を希望すると特別の料金が」山口育子

山口育子 (認定特定非営利活動法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)

登録日: 2025-03-19

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2024年10月から後発医薬品があるにもかかわらず、先発医薬品(長期収載品)の処方や調剤を希望すると特別の料金が請求されることになりました。特別の料金は、長期収載品と後発医薬品の価格差の4分の1相当です。たとえば、ある長期収載品の価格が1錠100円、後発医薬品の価格が1錠60円の場合、差額40円の4分の1である10円が特別の料金として請求されます。特別の料金は保険外なので消費税が課されます。後発医薬品は複数の製薬会社が発売していることが多く、薬価も異なることから、差額を計算する際には、最も高い後発医薬品の薬価が使用されます。

上記の場合、1回1錠、1日3回、30日分を処方された場合、特別の料金は990円で、3割負担患者の総負担額は3420円になります。これまでは1日300円(30点)×30日=900点で、3割負担額は2700円だったので、患者負担額は720円増えるわけです。

ただし、これには例外があり「医療上の必要がある場合」─つまり医師(歯科医師を含む)が長期収載品の処方や調剤が必要だと判断した場合は対象になりません。

厚生労働省が医療機関と薬局に説明しているチラシには、①長期収載品と後発医薬品で承認された効能・効果に差異がある場合で、その患者の病気の治療のために必要な場合。②その患者が過去に後発医薬品を使用して副作用があったり、長期収載品との間で治療効果に差異があったとするなど、安全性の観点等から必要と判断する場合。③学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されている場合。④後発医薬品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化できないなどの場合(単に剤形の患者の好みという理由では認められず、その判断は医師のほか薬剤師が行うこともできる)、とされています。

それ以外に、昨今の医薬品の供給不安定な問題が原因の場合にも「特別の料金を徴収する必要はない」とされています。生活保護受給者は2018年10月から医師が後発医薬品の使用が可能と認めれば、原則として後発医薬品を使用することとされ、特別の料金が発生すること自体ないそうです。

国は様々な方法で後発医薬品を増やす試みをしてきましたが、ここにきてとうとう、後発医薬品があるにもかかわらず長期収載品を選ぶと、特別の料金を患者が負担するという露骨な対策を講じたわけです。特別の料金は医薬品によって異なり、患者には複雑すぎて理解しにくく、医療機関や薬局でわかりやすく説明できるのだろうかと当初から心配していました。5カ月経った現在、電話相談などにこの特別の料金についての内容は一切届いていません。複雑すぎて、医療機関や薬局で説明していないのか、できないのか……。きちんと患者が理解しないままに進められていることに疑問を抱いています。

山口育子(認定特定非営利活動法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)[長期収載品][後発医薬品特別の料金

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