閉塞隅角緑内障は原発と続発,さらに発症の急激な急性型と緩徐な慢性型に分類される。原発閉塞隅角緑内障(PACG)の40歳以上の罹患率は0.6%とされ,隅角構造(虹彩と線維柱帯の癒着や接触)と緑内障性視神経症(GON)の有無から,PACG,原発閉塞隅角症(PAC),原発閉塞隅角症疑い(PACS)の3つに分類される1)。PACGとPACの中で急性に発症するものは,急性緑内障発作とも言われる。続発閉塞隅角緑内障の原因は隅角新生血管や膨隆水晶体など様々である。隅角新生血管から周辺虹彩前癒着が生じ,隅角が閉塞する病態は血管新生緑内障(NVG)と呼ばれる。
PACGの診断には,隅角鏡検査で後方の線維柱帯が3象限以上にわたって観察が不可能で,かつ圧迫隅角検査で器質的隅角閉塞(周辺虹彩前癒着),眼圧上昇,GONを認める必要がある。GONが生じていなければPACと診断される。機能的隅角閉塞のみで器質的隅角閉塞,眼圧上昇,GONのいずれもない場合はPACSと診断される。前眼部光干渉断層計が診断に有用である。急性緑内障発作では,眼圧はしばしば40~80 mmHgに上昇し,視力低下,霧視,眼痛,頭痛,嘔吐などの症状を呈する。
NVGの診断には,虹彩や隅角を詳細に観察し虹彩新生血管や隅角新生血管を確認する。初期には開放隅角であるが,進行すると閉塞隅角となる。原因として糖尿病網膜症,網膜中心静脈閉塞症,眼虚血症候群などが挙げられる。
PACGやPACに対してレーザー虹彩切開術(LI)や白内障手術などを症例に応じて施行する。LIは相対的瞳孔ブロックに対して有用であるが,合併症として水疱性角膜症が報告されている。一方,白内障手術は水晶体の体積が減少し,前房が深く隅角は開大するためPACGやPACに有効な治療であるが,PACG眼の白内障手術は,通常の白内障手術より難易度が高く,また,術後眼内炎や術後屈折度数ずれなどの合併症が生じることもある。PACSに対して予防的にLIや白内障手術を行うことは,PACSからPACに進行した割合が5年間の経過観察で22%程度であったことから2),賛否がある。ただし,急性緑内障発作が生じてから治療開始までの時間がかかるほど,視力予後は不良になるため,急性緑内障発作時にすぐに眼科を受診できない症例は予防的な治療の適応となる。また,眼底疾患があり散瞳検査をする必要性がある症例も予防的な治療の適応になる。
原因疾患に対する治療と高眼圧に対する治療が必要となる。まず,網膜虚血に対して徹底した網膜光凝固を施行する必要があるが,硝子体出血や白内障によって施行できないこともある。その場合,硝子体手術を施行し術中に網膜光凝固を行う。閉塞隅角期のNVGでは,緑内障点眼薬だけでは眼圧下降は得られにくく,緑内障手術が必要になることが多い。NVGは難治緑内障でありチューブシャント手術が有用である。また,最近では血管内皮増殖因子阻害薬であるアイリーア®の硝子体内注射が施行されるようになり,一時的ではあるが眼圧下降や新生血管の消退に役立つ。
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