神経芽腫は,交感神経節および副腎髄質から発症する小児がんである。小児の悪性固形腫瘍のうち,脳腫瘍についで2番目に多い1)。1歳半未満で発症する症例の多くが予後良好である一方で,1歳半以上で発症し転移を伴う例(いわゆる高リスク例)の予後はいまだ不良である。同一疾患の中で,生物学的な性質に幅が大きいためと考えられる。
腹部腫瘤やそれによる腹部膨満を契機に診断される症例もある一方で,転移症状を契機として診断される例も多い。骨転移・骨髄転移による発熱,血球減少(活気不良,出血症状など),骨痛(不機嫌,歩かないなど),眼球突出などがみられうる。さらに,縦隔腫瘤による上大静脈症候群,脊柱内への進展で脊椎を圧迫することによる下肢麻痺,オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(異常な眼球運動,小脳運動失調,ミオクローヌスなどを呈する)など,症状は多岐にわたる。神経芽腫を含めた小児がんの頻度は少ないが,長引く発熱や腹部膨満などの非特異的な症状に対する鑑別疾患から外さないこと,丁寧な診察を心がけること,下肢麻痺などの急を要する病態に対し,機を逃さず専門施設へコンサルトすることが肝要である。
神経芽腫の治療は,再発リスクに応じて化学療法,手術療法,放射線療法の組み合わせにより行う。いわゆる高リスク例においては,自家末梢血幹細胞を用いた大量化学療法を加える場合が多い。
小児がんの診断および治療は,小児科だけでなく小児外科,放射線科,病理部,さらに緩和部門,看護チームなど,多部門にわたるチーム医療を必要とする。多分に特殊な要素を含むことから,小児血液・がん専門医研修施設などの,一部の専門施設に集約することが望ましい。また神経芽腫については,日本小児がん研究グループ(JCCG)の神経芽腫委員会(JNBSG)により,各リスクに応じた多施設共同臨床試験が進行中である。可能な限り,これらの試験に参加できる環境で診療を行うことが望ましい。
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