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頸椎症性脊髄症・頸椎症性神経根症[私の治療]

No.5091 (2021年11月20日発行) P.44

山崎正志 (筑波大学医学医療系整形外科教授)

登録日: 2021-11-20

最終更新日: 2021-11-16

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  • 頸椎症の病態は,椎間板・椎体・椎間関節など頸部の脊柱全体の加齢変化である。脊髄あるいは神経根の圧迫により神経症状を呈すると,頸椎症性脊髄症,頸椎症性神経根症と称される。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    頸椎症性脊髄症では,手指のしびれ感,体幹・下肢の感覚鈍麻が両側性に出現することが多い。手指の巧緻運動障害,痙性歩行障害,排尿障害を呈する1)2)

    頸椎症性神経根症では通常,一側上肢の当該神経根支配領域への放散痛が生じ,続いて感覚鈍麻,脱力,腱反射低下などの神経脱落症状を呈する。

    【検査所見】

    神経学的所見としては,Spurlingテストなどの疼痛誘発テスト,感覚,運動,腱反射の所見により神経根症状,脊髄症状を判別する1)2)

    画像診断では,頸椎単純X線像で椎間板腔狭小化,椎体骨棘などの脊柱の変性所見を検出する。脊柱管前後径が12mm以下では脊柱管狭窄と判断され,脊髄症発生の危険性が高くなる。X線前後屈機能像で,後屈位に脊柱管が狭くなる動的脊柱管狭窄の有無を評価する。MRIでは,圧迫因子と脊髄・神経根の関係をとらえることができる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    歩行障害,手指巧緻運動障害,排尿障害などの脊髄症状が重度の場合を除き,まず保存療法が選択される。特に神経根症状の場合は,保存療法にて軽快する確率が高い。

    脊髄や神経根が障害されると,頸部・背部・上下肢に疼痛やしびれが生じる。疼痛は侵害受容性疼痛(スパッと切れるような痛み)と神経障害性疼痛(灼けつくような痛み)に大別される。前者に対しては,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が,後者に対しては神経障害性疼痛緩和薬が有効である。痙性が強い場合は,中枢性筋弛緩薬を併用する。長引く疼痛に対しては,ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI),弱オピオイドが使用される。

    重症の脊髄症,すなわち,日常生活動作に不自由な手指巧緻運動障害,歩行困難を伴う痙性歩行障害,膀胱直腸障害が明らかな場合は手術適応となる。また,保存療法に抵抗性の,耐えがたい上肢痛を有する神経根症では,手術が適応されることがある。脊髄症が重度となり脊髄に不可逆性の変化が生じると,手術を行っても十分な神経症状の改善が得られなくなる。重度となる前に専門医にコンサルトし,手術の時期を逸しないように配慮すべきである。

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