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低カルシウム血症[私の治療]

No.5093 (2021年12月04日発行) P.41

島村典佑 (東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科)

駒場大峰 (東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科准教授)

深川雅史 (東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科教授)

登録日: 2021-12-06

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  • 低カルシウム血症が軽度の場合は,原因の鑑別とその除去を優先する。血清カルシウム(Ca)濃度8mg/dL未満の場合は,Ca製剤と活性型ビタミンD製剤を用いる。より重度の場合は,静注製剤での補正を行う。

    ▶診断のポイント

    急性の低カルシウム血症では,神経や筋の易興奮性により,手足痙縮やテタニーなどが出現する。誘発試験により出現する症状として,Trousseau徴候やChvostek徴候がよく知られている。心電図ではQT間隔延長や徐脈がみられる。著しい低カルシウム血症では,昏睡,喉頭痙縮,心収縮力低下などの重篤な症状が出現することがある。慢性の低カルシウム血症は無症候性のことが多いが,高度の場合は知能低下,錐体外路症状,うつ,ミオパチー,くる病・骨軟化症,白内障,角結膜炎などを呈することがある。細胞外液中のCaは,約50%がイオン化Caとして存在し,残りの大部分はアルブミンなどの蛋白と結合している。実際に生理作用を発揮しているのはイオン化Caであり,低アルブミン血症等の際には偽性低値となるため,指標として以下の式で補正を行う。
    補正Ca濃度(mg/dL)=血清Ca濃度(mg/dL)+{4-血清アルブミン濃度(g/dL)}

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    表に低カルシウム血症の原因を示す。低カルシウム血症は,副甲状腺ホルモン(PTH)あるいは活性型ビタミンDの作用が不十分となったために起こる場合が多い。副甲状腺機能低下症,ビタミンD依存性くる病などがこれに該当する。また,副甲状腺摘出術後や,デノスマブ,Ca受容体作動薬などの投与後では,骨に急速にCaが移行する結果,低カルシウム血症となることもある(hungry bone syndrome)。

    低カルシウム血症を発症する状況はかなり限られていることから,臨床経過,併存疾患,薬剤歴などの聴取により,多くの場合,その原因を推定することができる。さらにintact PTH,1,25(OH)2D,必要に応じて骨代謝マーカーを測定することにより,診断はさらに確定的となる。

    低カルシウム血症の病態を考える上で,血清リン(P)濃度の変化は鑑別の糸口となる。血清Ca濃度とともに血清P濃度も低下している場合は,腸管からの吸収低下,骨形成の亢進に原因があることが示唆される。一方,血清P濃度が正常~高濃度である場合は,PTHの作用不全が原因である可能性が考えられる。また,Pの細胞内から細胞外へのシフトによる高リン血症の結果,低カルシウム血症が引き起こされている可能性も考えられる。尿中Ca排泄も,低カルシウム血症の病態を考える上で一助となる。尿中Ca排泄が亢進している場合(尿中Ca/Cr>0.3mg/gCr)は,副甲状腺機能低下症などを背景にCa再吸収が低下している可能性が考えられる。

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