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強直性脊椎炎[私の治療]

No.5096 (2021年12月25日発行) P.49

冨田哲也 (大阪大学大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学講座,寄附講座准教授)

登録日: 2021-12-24

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  • 強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)は体軸性脊椎関節炎の代表的疾患である。脊椎関節炎は炎症性背部痛,末梢関節炎,付着部炎,指炎,ぶどう膜炎,乾癬,炎症性腸疾患などの多彩な臨床症状とHLA-B27陽性である遺伝的な背景など,共通の関連因子を有する疾患群である。2008年に国際脊椎関節炎評価学会(ASAS)により体軸性脊椎関節炎の分類基準が提唱され,仙腸関節X線で改訂NY基準を満たすASとX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(non-radiographic axial spondyloarthritis)が含まれる。ASは1970年代よりHLA-B27との強い関連が示され,HLA-B27保有者が極端に少ないわが国ではASは稀な疾患であり,2015年に国の難病に指定されている。10~20歳代の男性に多く発症し,わが国での患者数はASが3200人程度,X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎が800人程度と推定されている1)

    ▶診断のポイント

    診断は,臨床症状として腰背部の疼痛,こわばり(3カ月以上持続,運動により改善し,安静により改善しない),腰椎可動域制限(Schober試験で5cm以下),胸郭拡張制限(第4肋骨レベルで最大呼気時と最大吸気時の胸囲の差が2.5cm以下),の3つのうち,1項目以上を満たし,仙腸関節X線(0度:正常,1度:骨縁の不鮮明化,2度:小さな限局性の骨びらん,硬化,関節裂隙は正常,3度:骨びらん,硬化の進展と関節裂隙の拡大,狭小化または部分的な強直,4度:関節裂隙全体の強直)で両側2度以上あるいは片側3度以上の所見を認め,鑑別診断を除外できればASと診断する。

    仙腸関節X線の読影は時に難しく,三次元的な解剖を理解した上で,正面像のみでなく斜位像も参考にする。CT, MRIも有用である2)。アキレス腱付着部炎や末梢関節炎として股関節,肩関節,膝関節に認められることが多い。

    上述の仙腸関節X線基準を満たさない場合は, X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎と考えられ,仙腸関節でのMRIによる炎症所見が重要となる。X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎はASに進行する場合としない場合があるとされているが,日本での移行率は不明である。

    血液検査では基本的にRFや抗CCP抗体は陰性であり,炎症反応も全例では陽性にならない。HLA-B27は陽性のことが多い。関節外症状としてぶどう膜炎や炎症性腸疾患に注意する必要がある。

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