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ウィルソン病[私の治療]

No.5108 (2022年03月19日発行) P.41

水落建輝 (久留米大学医学部小児科学講座講師)

登録日: 2022-03-21

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  • ウィルソン病は,常染色体潜性遺伝の先天性銅代謝異常症で,発症頻度は3万~4万人に1人である。ATP7B遺伝子異常により,肝臓からの銅の胆汁への排泄とセルロプラスミンとしての血中への分泌が障害され,全身に銅が蓄積し肝臓や脳を中心に臓器障害を引き起こす。早期診断すれば内科的治療が可能な先天代謝異常症である。症状は多彩で,肝障害を呈する場合を肝型,神経・精神症状を呈する場合を神経型,肝障害と神経・精神症状を併せ持つ場合を肝神経型と分類する。また,家族内検索や偶然の血液検査(トランスアミナーゼ上昇など)で発症前に(無症状で)診断された発症前型(無症候型)もある。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    肝型:黄疸,嘔吐,易疲労感,食欲不振,腹満,出血などが比較的多い。発症年齢は主に5~35歳で,5~15歳に発症するケースが多いが,40歳以上で発症する例もある。

    神経型:神経症状は,言語障害,構音障害,不随意運動などのパーキンソン病様症状(錐体外路症状)として発症する。精神症状としては,意欲低下,集中力低下,突然の気分変調,性格変化などが初発症状のことがあり,うつ,統合失調症などと誤診される場合がある。発症年齢は6~40歳と幅広いが,多くは11~20歳頃である。

    【検査所見】

    血液検査では,トランスアミナーゼ(AST/ALT)の上昇,血清セルロプラスミンの低下(20mg/dL未満),血清銅(セルロプラスミン結合銅)の低下を認める。その他,尿中銅排泄増加,肝銅含有量増加,超音波検査やCTで脂肪肝や肝硬変を認める,頭部MRIで基底核病変を認める,眼科検査でKayser-Fleischer輪を認める,遺伝子解析でATP7B遺伝子変異を認める,などがある。確定診断には,症状や検査所見をスコアリングして診断する,国際診断基準を用いる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    薬物療法による除銅と銅吸収の阻害,そして銅制限食(銅の多い食品を控える)が治療の基本である。薬物療法には,D-ペニシラミンとトリエンチンといった銅キレート薬による尿中への銅排泄促進と,亜鉛による消化管からの銅吸収阻害の2つがある。内服は,食前1時間もしくは食後2時間以上間隔をあけることが肝要である。食事成分と薬剤が消化管内で結合して,薬効が低下するためである。特にキレート薬では薬効が著しく低下するため,内服時間を厳守する必要がある。銅キレート薬と亜鉛を併用する場合も,同時に服用すると消化管内で結合するため,1時間以上あける必要がある。

    D-ペニシラミンは約30%に有害事象が出現し,神経型では治療開始初期に一過性の神経症状悪化が出現することがあるため,注意が必要である。発症前型に対する治療の第一選択は,亜鉛もしくはキレート薬の単剤治療である。肝不全(肝硬変)が進行した例では肝移植の適応となる。

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