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二次性高血圧症[私の治療]

No.5123 (2022年07月02日発行) P.40

有馬秀二 (近畿大学医学部腎臓内科主任教授)

登録日: 2022-07-01

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  • 高血圧をきたす原因疾患を持つものを二次性高血圧症と呼び,その頻度は高血圧患者全体の10%程度と考えられている。決して頻度は高くないものの,原因によっては高血圧が治癒しうること,また高血圧だけを治療しても原疾患の進行を抑制しえないことから,的確な診断と治療が必要である。本稿では二次性高血圧症の中でも頻度が高い疾患のみを記載する。

    ▶診断のポイント

    二次性高血圧症を見逃さないためには,まず疑うことが必要である。若いときに発症する重症の高血圧や急速に発症する高血圧,逆に50歳を過ぎてから高血圧が発症してくる場合などに疑う。さらに,二次性高血圧症を疑わせる所見を理学的所見・尿検査・電解質検査などの一般的な所見から見出すことが重要である。二次性高血圧症の鑑別が必要と考えられた際には,疑われる疾患に応じて内分泌検査(負荷試験を含めて)や画像検査を組み合わせて診断を進める。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【腎実質性高血圧】

    慢性腎臓病(CKD)に合併する高血圧が必ずしも腎実質性高血圧とは限らないが,尿蛋白陽性例ではレニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬を主体に,130/80mmHg未満をめざす。尿蛋白陰性ながらeGFR<60mL/分/1.73m2の症例では,カルシウム(Ca)拮抗薬を主体に140/90mmHg未満をめざす。腎機能の低下に伴い夜間高血圧の頻度が増加するため,家庭血圧で早朝高血圧を認める症例では利尿薬の追加を考慮する。

    【腎血管性高血圧】

    線維筋性異形成による腎血管性高血圧では,可能であれば経皮的腎動脈形成術(PTRA)による完治をめざす。粥状動脈硬化による腎血管性高血圧では,PTRAに降圧薬治療を超える治療効果は証明されていないため,腎機能を含む個々の患者の病態に応じて治療方針を決定する。両側性または片腎での腎動脈狭窄例ではPTRAを選択するが,それ以外ではCa拮抗薬に併用して少量からRA系阻害薬を増量していく。腎機能が悪化する場合や降圧困難な場合にPTRAを考慮することが多い。

    【原発性アルドステロン症】

    片側性で手術の同意が得られれば,積極的に腹腔鏡下副腎摘出術を行う。副腎静脈サンプリングなどの精査や手術希望がない症例や両側性の場合には,ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬を主体に降圧薬治療を行うが,通常はCa拮抗薬などの併用が必要である。

    【薬剤性高血圧】

    非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),グルココルチコイド,経口避妊薬などは血圧上昇作用を有するとともに降圧薬の効果を減弱させることで,管理困難な高血圧を発症させることがある。可能な場合にはこれらの薬剤を中止・減量することが望ましいが,併存疾患の治療のために継続が必要な場合にはCa拮抗薬を主体に降圧を行う。

    肝疾患治療薬,消化器疾患治療薬や多くの漢方薬に含まれる甘草は偽性アルドステロン症の原因になる。高血圧と同時に低カリウム血症を認め,血漿レニン活性と血漿アルドステロン濃度が低値であれば本症を疑い,甘草を中止するかMR拮抗薬で治療を行う。

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