株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

(13)2型糖尿病─やせの血糖コントロール不良 薬物療法を拒否し,過激な食事制限で減量したが血糖コントロールは悪化している[特集:困った患者の生活習慣指導]

No.4722 (2014年10月25日発行) P.73

編集: 津下一代 (あいち健康の森健康科学総合センター センター長)

松下まどか (あいち健康の森健康科学総合センター健康開発部主任専門員)

登録日: 2016-09-01

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 病歴(検査データは異常値のみ)
    47歳,女性。主婦。家族は会社員の夫と,中学生と高校生の息子2人。
    1年前の健診で,身長161.5cm,体重47kg,BMI 18.0,空腹時血糖205mg/dL,HbA1c 7.8%。他の医療機関を受診し,糖尿病教室に参加。食事療法と運動療法の講義を受けた。当初,本人の強い希望より生活習慣改善のみの治療を受けていたが,HbA1c 8%台が継続。主治医より薬物治療の併用が必要と説明された。しかし,生活習慣改善による治療を希望し通院を中断,当院での治療を希望して来院。最近,両足底のしびれも自覚している。「前医はすぐに薬を使おうとする」と不満を言う。神経質,完璧主義な患者であり,常にイライラした印象を受ける。網膜症,腎症はない。甲状腺ホルモンに異常はなし。
    来院時,HbA1c 8.2%,BMI 17.5。
    家族歴:父糖尿病,70歳で脳梗塞。飲酒:なし。喫煙:なし。
    運動:なし,食生活:野菜を中心に,カロリーを制限して減量を心掛けている。

    1. 医師はどのような点に困っているのか?

    問題点
    ▶薬物治療を拒否する
    ▶さらにやせれば血糖コントロールが改善すると思っている

    薬物療法に対する過度の拒否反応があり,生活習慣改善のみで血糖コントロールができると思っている。薬物療法を勧めた前医に不信感を持っており,通院を自己中断。すでにBMI 18.0とやせであったのに,さらに過激な食事制限により減量をしたが,血糖コントロールは悪化している。
    患者─医師の信頼関係を保ちながら,薬物療法の併用および適正体重の保持を納得してもらう方法はあるだろうか?

    2. 困難となる患者の状況をどう整理するのか?

    (1)患者─医師の信頼関係

    薬物療法を勧められた前医に不信を持ち,受診を中断していることから,医療者への不信感はあると思われる。しかし,信頼できる医師のもとで治療を続けたいと思っているようである。

    (2)糖尿病に関する知識

    病気に関する知識は豊富で,生活習慣改善に積極的に取り組んでいる。しかし,やり過ぎの印象を受ける患者である。

    (3)病気の経過と患者の「思い」

    薬物治療を勧めた医師の治療を自己中断しており,薬物療法に対する抵抗感は強そうである。生活習慣を改善しても血糖コントロールが改善しないことに強い敗北感を感じているようである。

    残り1,703文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top