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(15)2型糖尿病─薬物治療の自己中断 2型糖尿病─薬物治療の自己中断[特集:困った患者の生活習慣指導]

No.4722 (2014年10月25日発行) P.81

編集: 津下一代 (あいち健康の森健康科学総合センター センター長)

松下まどか (あいち健康の森健康科学総合センター健康開発部主任専門員)

登録日: 2016-09-01

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  • 病歴(検査データは異常値のみ)
    66歳,男性。土木関係の仕事(現在は無職)。独居。
    身長165cm,体重60kg,BMI 22。20年ほど前に糖尿病と診断されたが定期的な通院は行っていなかった。5年前に高血糖,増殖性網膜症と診断され,入院して光凝固術施行。術前より急激な血糖低下を避けるためインスリン導入(超速効型毎食前10単位の3回注)され現在に至るが,外来は不定期通院でHbA1cは8~9%とコントロール不良の状態が続いている。腎症3A期。降圧薬内服中である。「自分の血糖値は自分でわかる」と言い,血糖自己測定は行わず,自分でインスリンの単位を調節している。低血糖発作を頻回に繰り返している。
    家族歴:父が糖尿病,70歳時に心筋梗塞で死亡。飲酒:2~3合/日を週7日,喫煙:20本/日×40年。運動:なし,食生活:外食が中心。

    1. 医師はどのような点に困っているのか?

    問題点
    ▶定期受診しない
    ▶血糖自己測定を行わず,自分でインスリン注射の単位や注射のタイミングを調節している
    ▶低血糖を繰り返している
    ▶アルコールについては,「唯一の生き甲斐」といい,やめる気はない

    定期受診・インスリンの定期注射の必要性を繰り返し説明してもできない理由は何であろうか?
    合併症の進行を認めるがこのままの治療を続けていいのであろうか?
    低血糖発作を起こしており,独居者のため大変危険である。
    飲酒については,会話の糸口もみえない状態である。

    2. 困難となる患者の状況をどう整理するのか?

    (1)患者─医師の信頼関係

    不定期通院ではあるが他の医療機関に通っているわけでなく,まったく信頼していないわけではない。しかし,医師からの十分な説明を受けていない,自分の話を聞いてくれないなど,不満を持っているようにも見える。また,生活習慣や薬物治療など,医師の指示に従おうという気持ちがない。

    (2)病気に対する知識

    病気に対する一般的な知識は持っていると思われるが,飲酒・喫煙をやめる気はなく,金銭を相当つぎ込んでいるようである。
    「どうなってもよい」という気持ちを持っているようである。

    (3)患者の生活環境

    現在無職であり,生計をどのように立てているかは不明である。その身なりからも,経済的に厳しい状況が推測される。家族背景については話したがらない。

    残り2,637文字あります

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