新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行する。一方、感染症そのものに変化はない。このような状況の中で、各地域、医療現場では対応の再検討が必要となる。
上気道症状があっても新型コロナの検査をせず、かぜと診断して対症療法の処方をする医療機関が増えている。直後に家族も発症し、他院で新型コロナ検査陽性。先にかぜと診断された家族も新型コロナ検査陽性だったということも日常的だ。一般人の認識が甘くなり「熱が下がった」「のどが痛いだけ」など、軽い症状なら新型コロナではないと根拠なく判断している事例もある。5類になれば症状があっても受診や検査をせず、結果「新型コロナと診断されないかぜ」がさらに増えると思われる。
今は、ウイルスの変異、ワクチンの普及そして早期治療によって死亡率が下がっているが、ウイルスの感染力は強いため流行の波は繰り返すと思われる。そのため5類になっても「ただの風邪」と軽視せず、これまでの経験をもとに平時の医療提供体制を柔軟に適応させていくことが重要である。基礎疾患のある人、高齢者など新型コロナの重症化のリスクのある人やリスクのある人と接する人には新型コロナを疑い検査する。診断すれば薬を処方して重症化を予防し、感染対策するなどリスクがある人を守るための丁寧な対応が今後も必要である。また、5類では入院調整する行政・保健所の関与が薄くなり、消防や医療機関がその業務を負うため、感染者数が急増すると医療がひっ迫する恐れもある。
これまでの対応を含め、必要な対策を検討し継続することが重要である。
・相談体制:受診前の相談体制が医療負担を軽減するため、総合的な電話相談を継続する。
・感染拡大防止:上気道症状など体調不良時には、出勤・出校を求めない。休める環境を残し、きちんと休み、医療機関でも患者に休むことを推奨する。体調不良時に休む、咳エチケット、手指消毒は、全ての上気道炎の予防の基本であることを啓発する。
・重症化予防:重症化のリスクのある人は、早期の受診と検査・治療を積極的に行う。体調不良時は自主的に新型コロナの検査を行う。
・医療介護連携:高齢者施設等での集団感染は今後もある。基本的な感染対策ができているか、今一度確認して現場での対応を徹底し、医療介護連携を強化しておく。
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流行をできるかぎり予防し、平時の医療と介護体制を維持できるようにするために、5類ですべきことの準備を現場で協同して築いていく必要がある。
【参考文献】
▶ 日本環境感染学会:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第5版.
http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_taioguide5.pdf
▶ 厚生労働省:介護事業所等向けの新型コロナウイルス感染症対策等まとめページ.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/taisakumatome_13635.html
中山久仁子(マイファミリークリニック蒲郡院長)[新型コロナウイルス感染症]
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