2024年11月18日に開催された「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」において「後発医薬品の製造販売承認書と製造方法及び試験方法の実態の整合性に係る自主点検」(以下、「自主点検という」)の取り組み結果が報告された。
この調査は、一向に改善しない医薬品供給不足の主な原因である品質管理・製造管理の問題について「膿を出し切る」ものとして実施された。結果だけを要約すると、対象企業172社の全社ならびに対象品目すべてで自主点検を完了し、点検対象8734品目中3796品目(43.5%)が「承認書と製造等実態との相違あり」として報告された。ただし、これらのうち回収対応も検討する必要があるなどの重大な問題(相違)として報告された品目はなかった。
その後のマスコミの取り上げ方をみると、「4割超」という数字のみが独り歩きしている感が否めない。問題事例のすべてが公開されたわけではないが、今回、「相違」として報告された事例の中には、たとえば「原材料の混合において、手順書では全量を一度に投入するとなっているものを少量ずつ分割して投入している」など、製造手順のフレキシビリティの範囲と言えるものも含まれていた。そうした内容まで報告したということは、今回、企業がしっかり調査した証とも言える。今回の調査を受けて、今後4点を取り組むことが重要と考える。
第1に、今回の報告事例の内容を精査し、手順書で規定すべき内容の妥当性や、手順書改訂のプロセスを含む規制のあり方について議論を進めるべきである。手順書の過度な細分化が製造現場の柔軟性や手順書改訂の迅速性も阻害する可能性があり、合理的な基準を再構築する必要がある。
第2に、調査結果が一部の誤解をまねき、「相対的な」ジェネリック不信が広がるリスクに対処すべきである。今回の自主点検の対象はジェネリック医薬品であったが、長期収載品やオーソライズド・ジェネリック(AG)もジェネリック医薬品企業や同じ受託製造組織に委託されている事例が多く、それらの製造手順が十分に確認されていない現状を鑑み、公平かつ一貫した議論が必要である。
今回の調査の本来の目的は、a.安定確保と、b.信頼回復、であり、調査結果をもとに、それぞれについて①何を、②だれが、③いつまでに、するかを明らかにすべきである。すなわち、今後の取り組みの第3として、安定供給の確保については、問題事例製品とその同一成分薬での限定出荷を回避するため、製造手順の見直しや増産指示など、具体的なシナリオを規制当局が主体となって構築することが求められる。
第4に、ジェネリック医薬品への信頼確保として、問題事例の原因分析をより詳細に行い、業界全体で品質および製造の信頼性を向上させる体制を構築する必要がある。ジェネリック医薬品の使用促進を持続的に実現するため、規制当局と業界が連携し、年度内といった明確な期限を設定して対応に取り組むことが重要である。
坂巻弘之(一般社団法人医薬政策企画P-Cubed代表理事、神奈川県立保健福祉大学シニアフェロー)[ジェネリック医薬品]
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