□全身浮腫で緊急処置が必要になるのは,うっ血性心不全をきたしている場合である。
□低酸素血症,高二酸化炭素血症,頻呼吸など,呼吸の障害を伴う場合は,酸素投与や非侵襲的陽圧換気(non-invasive positive pressure ventilation:NPPV)など,適切な呼吸管理を行う。
□バイタルサインの異常を伴っていれば輸液路を確保するが,通常,浮腫に対して輸液の必要はない。
□うっ血性心不全など,血行動態の安定化が直ちに必要な場合は,利尿薬の静脈投与を考慮する。
□浮腫の成因と鑑別を表に挙げた。局所性と全身性に分類し,各疾患に特徴的な所見に注意すれば鑑別は容易である。
□心不全,肝硬変における腎臓でのNaと水の貯留は,低下した有効循環血漿量を保つための適切な代償反応である。そのため,plasma refillingを超える急速な浮腫の改善は循環虚脱・腎不全を引き起こす可能性がある。
□1日500~750g程度以下の体重減少を目標とするのが無難である。
□急速に増悪する全身性浮腫は,入院適応となる。また,うっ血性心不全がある場合も,入院適応となる。
□治療の基本は,1日3~5g程度の塩分制限である。
□利尿薬を使用する場合は,少量から開始し反応をみながら増量する。
□ネフローゼ症候群を含む腎疾患,心不全ではループ利尿薬が第一選択である。以下の処方より開始する。なお,無症状の高齢者では10mgより開始とする。
□肝硬変における腹水・浮腫には,一般にスピロノラクトンが第一選択とされている。
□アルブミンは高度の低アルブミン血症(2g/dL以下),非代償性肝硬変,循環虚脱(ショック)や急性腎不全などの限られた症例にのみ投与を考慮する。
□塩分制限や利尿薬などの薬剤によるコントロールが困難で,呼吸循環動態に影響を及ぼすような高度の浮腫に対しては,最終手段として血液(透析)濾過を利用した限外濾過による治療を考慮する。
1) 折田義正, 他:内科学. 第4版. 上田英雄, 他, 編. 朝倉書店, 1988. p903-5.
2) Braunwald E, et al:Harrison's Principles of Internal Medicine. 19th ed. Kasper DL, et al, ed. McGraw-Hill, 2015.
3) 柴垣有吾:より理解を深める! 体液電解質異常と輸液. 第3版. 中外医学社, 2007, p23-7.
4) 下條文武:専門医のための腎臓病学. 第2版. 医学書院, 2009, p77-83.
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