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高HDL血症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-19
井上郁夫 (埼玉医科大学健康推進センター,内分泌・糖尿病内科教授)
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  • ■疾患メモ

    高比重リポ蛋白(HDL)の低下は,冠動脈疾患の独立した危険因子であり,HDLは動脈硬化防御作用を有するリポ蛋白と考えられる。したがって,高HDL血症では動脈硬化の発症が少ないと考えられているが,ある遺伝性によってもたらされる高HDL血症は,冠動脈疾患を予防できない場合がある。

    2013年11月に実施した「国民健康・栄養調査」1)によれば,高HDL血症をHDL-C 80mg/dL以上とすれば,男性6.2%,女性16.5%が高HDL血症で,女性の高HDL血症の割合は男性と比較して高く,年齢によってその割合が低下する。また,米国の高HDL血症は7.8%と報告されている。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    HDLの高値自体による症状はない。

    ある遺伝性によってもたらされる高HDL血症患者は,冠動脈疾患との関連が認められている。

    血管に蓄積した過剰なコレステロール(Chol)は,HDLやアポ蛋白A-Ⅰによって引き抜かれ,HDL中へ組み込まれ,レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(lecithin-cholesterol acyltransferase:LCAT)によりHDL中のCholはCholエステルとなる。

    さらに,HDL中のエステル化されたCholはCholエステル転送蛋白(cholesteryl ester transfer protein:CETP)により,超低比重リポ蛋白(very-low density lipoprotein:VLDL),中間比重リポ蛋白(intermediate density lipoprotein:IDL),低比重リポ蛋白(low-density lipoprotein:LDL)などのリポ蛋白へ転送される。

    CETPが作用したHDLはVLDL,IDL,LDLからトリグリセライド(Trigly)が転送されTrigly richな大型なHDLが産生され,肝性リパーゼが作用し小型なHDLが産生される。

    高HDL血症は,上記のHDL代謝に関与する酵素や蛋白の異常などにより起こる。

    【検査所見】

    HDL-Cが80mg/dL以上を高HDL血症とする。

    二次(続発)性高HDL血症の鑑別のため,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT),甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定する。

    そのほか,遺伝性高HDL血症を診断するため,家族歴を聴取する。

    保険収載されている脂質関連検査として,Lp(a)と3%ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動(poly-acrylamide gel electrophoresis:PAGE)法がある。

    PAGE法はリポ蛋白のサイズを反映し,HDL以外のリポ蛋白であるVLDL,IDL,LDLの脂質プロファイルを評価でき,小型で高密度のsmall dense LDLも容易に評価できる。Lp(a)高値は,後述するCETP欠損症の冠動脈疾患のリスクとなるとの報告もある。

    保険収載はされていない脂質関連検査として,CETPや肝性リパーゼの活性および蛋白を測定する。後述する肝性リパーゼ欠損症による高HDL血症はきわめて稀ではあるが,肝性リパーゼがIDLからLDLへの代謝に関わるので,肝性リパーゼ欠損症患者のIDL(β-VLDL)が増加する。

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