編集: | 坂井建雄(順天堂大学医学部教授) |
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編集: | 石崎泰樹(群馬大学医学部教授) |
判型: | 四六倍判 |
頁数: | 288頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2018年11月09日 |
ISBN: | 978-4-7849-3232-0 |
版数: | - |
付録: | 電子書籍のダウンロード権(シリアル番号)が付いています |
医学生のための細胞生物学書 医学を学ぶために必要な最低限の知識をコンパクトにまとめた入門書。導入部は高校生物の延長で理解できるよう、易しく解説しました。一方で、免疫異常、癌、メタボリック症候群、認知症などの疾患を取り上げ、臨床を強く意識した内容になっています。
分子・細胞レベルの基礎知識を統合 生化学・生理学・組織学の総論部分を統合し、人体と細胞の関係を軸に再編集しました。各科目で重複している内容を効率的に学習できます。
図解中心の見やすい紙面 フルカラーの図解を中心に、1テーマが見開きで完結するよう編集しました。要点が一目で見渡せ、初学者に親切な設計です。
『カラー図解 人体の正常構造と機能』との連携 『人体の正常構造と機能』に記載されている生命現象を、分子・細胞レベルで理解できるよう解説しました。二冊を併せて読むことで、人体をより良く理解できます。
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診療科: | 基礎医学 | 生物学・分子生物学 |
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シリーズ: | カラー図解 人体の正常構造と機能 シリーズ |
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序章 細胞とは何か
あらゆる生物は細胞からできている
1個の細胞から高度な生物体が生じた
均質な細胞が集まって組織を作る
人体は細胞が生きるための内部環境を整える
細胞は膜で区切られた小器官と細胞骨格を含む
第1章 細胞はどのようにして生きているか
1.1 細胞の膜系
生体膜は脂質と蛋白質からなる
脂質二重層は流動性と方向性を保っている
膜の機能のほとんどは膜蛋白質が担っている
細胞膜の内側は細胞皮層、外側は糖衣が覆っている
細胞膜における物質輸送の原動力は電気化学勾配である
一次性能動輸送を行うポンプはATPによって駆動される
単輸送体は促進拡散を行い、共役輸送体は二次性能動輸送を担う
チャネルはイオンを選択的に通過させ膜電位を変える
1.2 エネルギーと生体物質の代謝
異化によって放出されたエネルギーはATPに蓄えられる
解糖系は酸素がなくても進行し、正味2分子のATPを獲得する
血糖値を維持するためにグリコーゲンが分解される
クエン酸回路は燃料分子から電子を受け取り、電子伝達系に渡す
酸化的リン酸化により大部分のATPが産生される
アミノ酸はアミノ基と炭素骨格に分けて代謝される
過剰なエネルギーは中性脂肪として脂肪細胞に貯蔵される
空腹時には脂肪酸がエネルギー源として利用される
ヌクレオチドは体内で新たに合成される
酵素活性は様々に調節される
1.3 遺伝情報の発現と継承
DNAは2本の長いヌクレオチド鎖であり、折りたたまれて核内に収まる
DNAから蛋白質へ(1)RNA
DNAから蛋白質へ(2)転写
DNAから蛋白質へ(3)翻訳
ポリペプチド鎖は複雑な立体構造をとることで、蛋白質となる
蛋白質の機能を規定する単位をドメインという
細胞周期が正しい順番で進行するようチェック機構が存在する
DNAは親鎖を鋳型に半保存的に複製される
除去修復と組換え修復により、ゲノムは安定に維持される
有糸分裂により、同じ染色分体が娘細胞に分配される
第2章 細胞は人体のために何をしているか
2.1 上皮輸送
上皮細胞は隙間のないシートを作り、間質液と外界を隔てている
上皮細胞は電解質輸送を行い、体内のイオン環境の恒常性を保っている
水は浸透圧に従って上皮を通過する
上皮細胞は糖・アミノ酸・その他の有機物の輸送体を備えている
2.2 細胞の興奮
神経系はニューロンとグリア細胞で構成される
神経線維はグリア細胞によって保護されている
ニューロンは活動電位を発生する
電位依存性イオンチャネルの開閉が活動電位を形づくる
神経の興奮は軸索を通って伝えられる
細胞の興奮はシナプスを介して次の細胞に伝えられる
神経伝達物質が受容体に結合すると、膜電位が変化する
シナプス伝達は様々な機構によって修飾され、細胞の興奮性を調節する
筋細胞は電気的興奮により収縮する
感覚器は外界からの刺激を活動電位に変換し中枢へ送る
2.3 細胞骨格
細胞骨格は細胞の形を維持するとともに、細胞運動を行う
微小管は常に伸長と短縮を繰り返す動的な構造である
微小管は軸糸を作り、線毛運動や鞭毛運動を行う
微小管は細胞内輸送の軌道となる
マイクロフィラメントはアクチンが重合してできる
マイクロフィラメントは細胞皮質を形成し、細胞移動にも関わる
アクトミオシンが筋収縮の基本ユニットである
アクチンとミオシンの形態変化が筋収縮をもたらす
中間径フィラメントは、張力に対抗して細胞の構造を維持している
2.4 細胞接着と細胞外基質
接着装置が細胞を固定し、組織を形づくる
アドヘレンス結合・デスモソームは細胞骨格と連結する
タイト結合は細胞間隙の物質透過性を制御する
ギャップ結合は細胞間を電気的・代謝的に連結する
接着斑・ヘミデスモゾームは、細胞外基質と細胞骨格をつないでいる
コラーゲン線維は結合組織に物理的強度を与える
プロテオグリカンは水分を貯え、フィブロネクチンは接着分子として働く
2.5 細胞内の物質輸送と処理
小胞体上で蛋白質の合成と膜透過が同時に起こっている
細胞質で合成された蛋白質は、受容体によって各小器官に配分される
小胞体で合成された蛋白質は、小胞輸送により所定の区画に運ばれる
小胞体とゴルジ装置は蛋白質の修飾と選別を行う
エキソサイトーシスにより膜の補充と細胞外への分泌が起こる
大きな分子はエンドサイトーシスにより細胞膜ごと取り入れることができる
小胞体は蛋白質の品質管理を行っている
オートファジーは細胞質成分を無差別に分解する
第3章 細胞の活動はどのように調節されるか
3.1 細胞間のシグナル伝達
細胞どうしは生理活性物質を用いて情報伝達を行っている
神経伝達物質は神経細胞によって合成され、軸索末端から放出される
水溶性ホルモンの受容体は細胞膜に、脂溶性ホルモンのそれは細胞内にある
サイトカインは免疫、炎症、細胞増殖と細胞死に関わる
エイコサノイドは細胞膜の脂質に由来する生理活性物質である
細胞膜受容体は膜を貫いて細胞内に情報を伝達する
核内受容体はDNAに結合して標的遺伝子の転写を調節する
3.2 細胞内のシグナル伝達
三量体G蛋白質は機能的に4種類に分けられる
cAMPをセカンドメッセンジャーとする細胞応答はエネルギー産生に向かう
細胞膜のリン脂質からセカンドメッセンジャーが産生される
細胞内Ca2+濃度の上昇は様々な細胞応答を引き起こす
細胞増殖のシグナルはチロシンキナーゼを介して核内に伝えられる
リン酸化と脱リン酸化がシグナル伝達のスイッチとして働く
インスリンの多彩な作用は、IRSを起点としたシグナル伝達の広がりによる
3.3 遺伝子発現の調節
遺伝子発現は転写・翻訳の各段階で調節を受ける
転写因子はDNA上の制御領域に結合して転写活性を調節する
転写因子はDNA二重鎖の主溝にはまり込むように結合する
転写因子の組み合わせが、細胞分化の多様性を制御している
mRNAは転写後にも様々な調節を受ける
核内受容体は転写因子として働く
発生過程における遺伝子発現パターンが形態形成を誘導する
3.4 細胞の分化増殖と細胞死
幹細胞は自己複製しつつ、新しい分化細胞を供給する
造血幹細胞の分化には、骨髄微小環境と造血因子が必要である
酸素分圧の低下が血管新生を促す
骨芽細胞と破骨細胞が骨組織を維持している
不要な細胞、障害された細胞はアポトーシスにより除去される
3.5 性分化と個体の生殖
減数分裂により生殖細胞の染色体数とDNA量は半分になる
生殖細胞のエピゲノム情報は受精後に再構成される
受精により精子と卵子の核が融合しゲノムが混合する
SRY遺伝子の有無が性を決定する
性ホルモン分泌は視床下部‐下垂体‐性腺系で制御される
第4章 細胞の変容はどのような病態を引き起こすか
4.1 免疫
感染初期に補体が活性化され、自然免疫を発動させる
自然免疫における病原体センサーはパターン認識受容体である
適応免疫の主役はリンパ球である
遺伝子再構成とクラススイッチにより多様な抗体が作られる
活性化T細胞は様々な機能を持つエフェクター細胞に分化する
MHC分子は自己と非自己を区別する目印となる
過剰な免疫応答により組織障害をきたした状態がアレルギーである
免疫の各段階で自己を攻撃しない仕組みが存在する
4.2 癌
癌細胞は大量のグルコースを消費しながら自律的に増殖する
癌細胞は細胞周期の制御を逸脱して無限の分裂能を獲得する
後天的な体細胞変異が発癌の引き金となる
複数の遺伝子変異が蓄積して発癌に至る
癌細胞は宿主の免疫系を回避することで生き残りを図る
癌細胞は自身の性質を変化させて浸潤・転移する
抗癌剤の標的はDNA・微小管・シグナル伝達分子である
4.3 生活習慣病
メタボリック症候群の主役はインスリン抵抗性である
糖尿病ではインスリン分泌低下とインスリン抵抗性が起こる
動脈硬化症は血管内皮細胞障害をきっかけとして発症する
高血圧症の9割は原因が特定できない本態性である
糸球体濾過膜が障害されると尿の生成が低下する
4.4 神経変性疾患
神経変性疾患では細胞内外に異常蛋白質が蓄積する
反復配列の過伸長は神経障害を引き起こすことがある
医学・生物学における活発な研究によって、人体、細胞、病気についての理解が急速に広がり、かつ深まってきています。その成果が医療に応用されて新しい医療技術を生み出し、医師・医療者になるために学ぶべき内容も急速に膨れあがっています。限られた学習期間の中で膨大な内容を、高い質を維持しながらいかに効率よく学習するか、それは医学の教育・学習における重要な課題です。
とりわけ細胞生物学と分子生物学の進歩は目覚ましく、かつ免疫の異常、癌、生活習慣病といった臨床医学の知見と深い関わりをもっていることから、基礎医学の学習における重要なテーマになっています。しかし、これらのテーマは、解剖学・生理学・生化学といった伝統的な医学の学問領域にはおさまらないため、誰がどのように教えていくべきか、悩ましい問題です。
欧米には優れた細胞生物学書があり、日本語に翻訳されています。また生物学者の立場から書かれた細胞生物学書もあります。ただ、いずれも細胞を中心とした生物学に重点が置かれており、医学・医療の基礎として学ぶのに適しているとは言えません。
医学を学ぶ人たちのために、人体と細胞の関係、病気との関連といった課題を軸にして、現代の最先端の細胞生物学を学ぶための新しい枠組みを提供する、それが本書のコンセプトです。第1章では生命の基本単位としての細胞の仕組み、第2章では細胞が集まって人体のために働く仕組み、第3章では人体が細胞の働きを調節する仕組み、第4章では細胞と病気との関わりについて学びます。
本書の姉妹編である『カラー図解 人体の正常構造と機能』は、解剖学・生理学・生化学を統合した臓器別のシリーズとして出版され、統合型の基礎医学教科書として医学生に広く迎えられました。現在ではシリーズ全10巻の合冊版も刊行され、版を重ねています。本書はその総論として企画され、併せて読むことにより人体についての理解が深まるよう構成されています。内容面での整合性はもちろんのこと、フルカラーの図解を中心に1テーマを見開きとする使いやすい紙面レイアウトを採用し、統一的な編集を心がけました。また無料アプリで電子版を閲覧することができるようにしました。
本書の執筆者はいずれも、医学の第一線で教育と研究に携わっていて、しかも細胞生物学の各分野のエキスパートの方たちです。まさに医学研究者による、医学学習者のための、医学に即した細胞生物学書を、ここに初めて実現することができました。
多くの方たちが、本書を通して医学における細胞生物学の面白さと重要さを学び、これからの学習の基礎として役立ててくれることを願っています。
2018年10月
著者を代表して 坂井建雄・石崎泰樹
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。