著: | 埜中 征哉(国立精神・神経医療研究センター病院名誉院長) |
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判型: | AB判 |
頁数: | 324頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2014年08月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-5065-2 |
版数: | 第4版 |
付録: | - |
所見・診断・治療法をわかりやすく解説。第4版増補では、肢帯型筋ジストロフィーの分類追加、多発筋炎の変更などが加わりました。カラー病理組織写真など510枚、電顕写真など170枚を用いての解説は本書ならではです。学会認定医試験にも必携の筋病理、筋疾患のアトラスです。
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<筋病理組織標本の基礎 >
1 筋病理組織標本の作り方
■ 筋生検
■ 検体処理
■ 切片の作成
■ 染色法
2 筋病理組織標本の読み方
■ 正常骨格筋の組織像
■ 各種染色法の意義
■ 筋線維の壊死・再生
<主な筋疾患の筋病理組織像>
1 筋ジストロフィー(muscular dystrophies)
Ⅰ. デュシェンヌ型筋ジストロフィー
Ⅱ. ベッカー型筋ジストロフィー
Ⅲ. 大腿四頭筋ミオパチー
Ⅳ. 先天性筋ジストロフィー
Ⅴ. 肢帯型筋ジストロフィー
[常染色体優性遺伝をとる主な疾患]
[常染色体劣性遺伝をとる主な疾患]
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
エメリ・ドレフュス型筋ジストロフィー
遠位型筋ジストロフィー
2 遠位型ミオパチー(distal myopathies)
3 筋強直症候群(myotonic disorders)
4 先天性ミオパチー(congenital myopathies)
5 代謝性筋疾患(metabolic myopathies)
Ⅰ. 糖原病
Ⅱ. 脂質蓄積ミオパチー
Ⅲ. Danon病(正常酸マルターゼ値を示すライソゾーム性糖原病)
Ⅳ. 筋原線維ミオパチー
6 内分泌・代謝性筋疾患(endocrine and metabolic myopathies)
7 ミトコンドリア病(mitochondrial disorders)
[ミトコンドリアDNAに変異をみる疾患]
[その他のミトコンドリア病]
8 炎症性筋疾患(inflammatory myopathies)
9 中毒・寄生虫疾患(toxic and parasite myopathies)
10 神経原性筋疾患(neurogenic muscular atrophies)
Ⅰ. 神経原性筋萎縮症
Ⅱ. 脊髄性筋萎縮症(SMA)
Ⅲ. 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)
Ⅳ. 若年性一側性筋萎縮症(平山病)
Ⅴ. 先天性髄鞘形成不全ニューロパチー
Ⅵ.その他
11 整形外科領域の筋疾患
12 筋ジストロフィーのモデル動物
<電子顕微鏡による組織像>
■ 正常骨格筋(normal striated muscle)
1.筋原線維
2.筋衛星細胞
3.筋細胞内小器官
4.筋線維タイプ
5. 筋内神経,神経筋接合部
6.間質
■ 病的筋組織( ultrastructural pathology of diseased muscles)
1.筋原線維
2.筋線維内小器官
3.核
4.筋線維の変性・壊死・再生
5.間質組織
6.その他
早いもので、「臨床のための筋病理」初版を出版してもう23年になります。「初版はページ数も少なく持ち運びが楽で、要点のみの記載でわかりやすかった」とのお言葉を頂きました。でも、第2版からは電子顕微鏡図譜を追加し、一気に厚さ、重さが増しました。分子生物学の進歩で、次々と新しい疾患がみつかり、新しい疾患概念も出てきました。それらを追加して、第4版もまた分厚くなりました。内容が多くなった分、読みにくさも出てきたと思います。時の思い出を語ったこともあります。私にとって、この本は私の人生の縮図のようなものです。
Tさん(本書p47、図1)はわたしが現在の国立西別府病院で働いているときに入院してこられました。当時6歳でした。どんな筋肉の病変があるのか知りたくて、筋生検をさせて頂きました。ただ、ご本人や親御さんにきちんと説明しないで、勝手にわたしが筋生検をしたのです。後でお父様は大変お怒りだったとお聞きしました。今ならば、きちんと筋生検の必要性をご説明し、許可を文書でとって行います。Tさんには大変申し訳ないことをしたと心苦しく思っています。このTさんと偶然にもメール交換をすることになり、なんと28年ぶりに再会し、お話することができました。そのときTさんは既に34歳、気管切開をして、人工呼吸器をつけておられ、手足はまったくといってよいほど動かすことができませんでした。でも、大きな声で深夜まで私に付き合って話して下さいました。筋生検のことをお話したのですが、「確かに痛かった。でも遠い過去のことで、どうでもよいことです。」とお話し下さいました。「今は入院生活をしているけれど、メールもできる。自分のホームページも作った。社会が広がってきた。」と前向きに生きる意欲を示されたことに感動しました。でも、そのTさんも私がお会いして4年後に他界されました。Tさん38歳の人生でした。
筋疾患の診断は筋病理だけでなく、分子生物学的な手法で格段に進歩しました。病態もわかりつつあります。でも、これだけ学問が進歩したのにまだ筋ジストロフィーの患者さんで病気が治ったという人は1人もおられません。進行がストップしたという方も聞いたことがありません。私が数年後に第5版を出すときは、治療のことも書くことができればよいと心から願っています。第5版のときには私がこの世にいないかもしれません。そのときはどなたかが、「臨床のための筋治療学」という本をだして下さるでしょう。
第4版に追加された多くの写真は、神経研究所疾病研究第一部の西野一三部長先生はじめ多くの先生方の研究成果を拝借しました。また筋病理標本を作製して頂いた国立精神・神経医療研究センター病院臨床検査部 DNA診断・治療室の皆様にも深く感謝いたします。