降圧薬「ディオバン」(一般名:バルサルタン)を巡る不正の発覚以降、製薬業界は国の要請に応える形ではあるものの、医薬情報担当者(MR)などによる医療用医薬品のプロモーションに自主規制を行ってきた。しかし、承認範囲を超えた宣伝やデータの加工といった不適切な情報提供は後を絶たない。
厚生労働省は2016年度から病院の医師・薬剤師の協力を得て、企業のプロモーションを覆面調査する監視モニター事業を実施している。17年度の事業報告書によると、モニターから不適切またはその疑いがあると報告された事例は、約5カ月間で52製品67件に上った。情報入手方法の大半は、企業の製品説明会やMR(口頭説明、印刷物等)だ。事例の内訳は「事実誤認の恐れのある表現」が28件(41.8%)で最も多く、「事実誤認の恐れのあるデータ加工」が10件(14.9%)、「未承認の効能効果や用法用量の提示」が8件(11.9%)などとなっている。データ加工では、対照群との差を大きく見せようとグラフに恣意的な補助線を付け足したり、対照群のデータを消した資料を提示するといった事例も報告された。製品説明会では画面上でのみ情報を提示するなど、証拠が残りにくいプロモーションもみられた。報告書では、製品説明会や医療機関への訪問など、“クローズドな場”で不適切事例が生じやすいと分析している。