2014年度改定に伴う薬価制度改革で、後発品メーカーには「薄利多売」が求められるようになった。課題とされる安定供給の確保に向け、巨額の設備投資が必要となるため中小メーカーを巻き込んだ業界再編も噂され、その行方に注目が集まっている。(本誌・土屋寛)
日医工1.61倍、沢井製薬1.79倍、東和薬品1.57倍─。この数値は日本国内の大手後発医薬品メーカー各社の売上高が過去5年間でどれだけ伸びたかを示すものだ。景気が回復しつつあるとされる日本経済においても、業界全体の市場が拡大し続ける“成長産業”は製造業では他に見当たらず、今後もさらに成長が加速していくと予想される。
ここで、改めて後発医薬品について簡単な解説をしたい。後発医薬品は「新薬の独占的販売期間(有効性・安全性を検証する再審査期間及び特許期間)が終了した後に発売される、新薬と同じ有効成分で効能・効果、用法・用量が同一であり、新薬に比べて低価格な医薬品」(日本ジェネリック製薬協会)と定義され、ジェネリック医薬品とも呼ばれる。製品特許の切れた長期収載品とまとめて「エスタブリッシュ医薬品」と総称されることも多い。かつての“ゾロ”のイメージから脱却するために様々な名称が使われているようだが、かえって混乱を招いているとの指摘もある。
また、先発品メーカーから販売許可を得た、添加物まで先発品とまったく同じ製品でありながら安価な「オーソライズド・ジェネリック」という新カテゴリーも昨年から登場するなど、後発品を巡る環境はここ数年で大きく変化している。
こうした背景には、財政健全化に向けた政府の医療費削減方針の柱として後発品使用促進策が位置づけられていることの影響が大きい。2007年6月の「経済財政改革の基本方針 2007」では、後発品の数量シェアを12年までに30%以上(旧指標)にする目標値を定め、13年4月には「後発品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定。ロードマップでは、18年3月末までに、数量ベースの後発品シェアを新指標で60%以上(旧指標で約34%相当)にまで引き上げることが目標とされた。目標を達成することで、国民医療費約5300億円、国費約1400億円の削減効果(表1)が見込まれている。
ロードマップでは、シェア60%以上という目標達成に向けた主な取り組み内容として、①安定供給、②品質に対する信頼性の確保、③情報提供の方策、④使用促進に係る環境整備、⑤医療保険制度上の事項、⑥ロードマップの実施状況のモニタリング─の6項目を挙げている。新指標では後発品先進国の欧米諸国と比較ができるよう、シェアの定義(表2)を「後発品に置換え可能な全医薬品における後発品が占める割合」とした。それに伴い、分母を「後発品のある先発品+後発品」、分子を「後発品」とする算定式に変更。つまり新指標では、先発品の特許が切れるたびに分母が大きくなるため、後発品への置換えが進まなければシェアはどんどん低下する。シェア60%の目標は以前の30%に比べかなり厳しいハードルといえる。
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