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【HPVワクチン副反応】アジュバント原因説「科学的根拠乏しい」─厚労省専門家会合

No.4689 (2014年03月08日発行) P.8

登録日: 2014-03-08

最終更新日: 2017-08-09

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【概要】厚生労働省の専門家会合は、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種後の疼痛など副反応症状の原因をアジュバント成分とする見解に対し否定的な見方を示した。

厚労省の厚科審副反応検討部会と薬食審安全対策調査会の合同会議は2月26日、接種の積極勧奨を一時差し控えているHPVワクチンの副反応症状を巡り引き続き議論した。

疼痛などの副反応について同会議は1月に「接種直後の局所疼痛をきっかけとする心身の反応」との見解を示したが、ワクチンの安全性を疑問視する国内外の臨床医らから反発が出たため、厚労省は会議に先立ち、部会委員と臨床医らの意見交換会を開いた。

その中で、米ミルフォード病院研究所のシン・ハン・リー所長は「アジュバントに含まれるアルミニウムに吸着したマクロファージが全身を循環する過程で脳の中枢神経を傷害し、症状の慢性化につながった」と主張。パリ大のフランソワ・オーチェ教授と堺春美元東海大教授もアジュバントを問題視し、「脳の炎症を心身の反応とは言えない」と強調した。これに対し複数の部会委員らが、根拠となる症例データに対照群がないなど調査手法に不備があることや、アルミニウムを含むワクチンが世界で80年以上使用されていることなどを指摘。アジュバントが副反応の原因とする説を「科学的根拠に乏しい」との見解を述べ、ワクチンの安全性は確保されているとした。

●痛みと有効性の事前説明求める
意見交換会後の合同会議には、宮本信也筑波大教授が参考人として出席し、接種後に疼痛や運動障害などを訴える患者に対する診療モデルを提示した。宮本氏は「医師が根拠を示してワクチンが原因でないと説明しても、患者はかえって不満を募らせる」と指摘。「原因については一時棚上げし、患者と家族にとって望ましい状態を相談・整理しながら実現すべきだ」と訴えた。

これを踏まえ委員らは、今後接種を実施するに当たっての注意点として、①HPVワクチンが他のワクチンに比べて局所疼痛を生じやすいことを事前に説明する、②ワクチンの有効性を啓発する、③患者をよく知るかかりつけ医での接種を勧める―などをまとめた。

●勧奨再開は報告書完成後に判断
積極勧奨再開についての議論は今回もなされず、結論は再び持ち越された。桃井眞里子部会長は「現在、強固なエビデンスに基づいた安全性に関する報告書を作成中だ」と述べ、報告書がまとまり次第判断する考えを示した。


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