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【シリーズ・製薬企業はどう変わろうとしているのか─各社のキーパーソンに聞く(4)〈中外製薬〉】創薬支えるMR活動の根幹はプロモーションではなくコンサルティング

No.4918 (2018年07月28日発行) P.14

登録日: 2018-07-26

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薬価制度改革、臨床研究法制定などで医薬品開発・販売を巡る環境が大きく変化する中、新しい時代に対応した製薬企業と医療提供者の関係性、コミュニケーションのあり方を探る本シリーズの第4回は、ロシュ(スイス)との戦略的アライアンス体制の下、創薬技術の開発に力を注ぐ中外製薬の佐藤綱則営業本部長に話を聞いた。
16年前にロシュとの提携をまとめた永山治会長から小坂達朗社長へ今年3月に最高経営責任者(CEO)が交代した同社は、創薬や情報提供活動において、いまどのような道を進もうとしているのか。

「世にない薬を創り続ける」

―シリーズ開始に当たって本誌が行ったアンケートでは、現場の医師から中外製薬に対し「有用な薬剤の開発を期待する」という声があり、創薬への期待の大きさをあらためて感じました。3月にはCEOの交代もありましたが、創薬技術主導のイノベーションを大切にする路線は変わらないと考えていいのでしょうか。

佐藤 創薬の方向性は変わりません。私たちはアンメットメディカルニーズを踏まえ、技術ドリブン(技術主導型)の創薬戦略をとっています。最近は、抗体医薬品・低分子医薬品に続く第3の柱として中分子創薬にチャレンジしていますが、そういった形で「世にない薬を創り続ける」方針は全くぶれていません。
製薬会社によっていろいろなアプローチがあり、 「この領域で」とターゲットを決めて創薬を進めるやり方もありますが、私たちは疾患を狭めるのではなく、まず、これまでにない創薬技術を開発し、「この技術を使うと、こんな病気が治せる」と、テクノロジーからアプローチする戦略をとっています。

―そこは大きな違いですね。

佐藤 例えば、今年5月に抗体改変技術を用いて創製した血友病治療薬「ヘムライブラ」を発売しましたが、いままでノウハウがない領域の薬であっても、テクノロジーが合えばどんどん出していくという戦略です。
そういう戦略をとっていると、MR(医薬情報担当者)の役割はいままで通りではなくなるのでは、という声がありますが、私たちは、革新的な医薬品を医療現場でフルに活用いただくためには、MRによる情報提供が非常に重要と考えています。

他社製品の推奨も含めたコンサルティング

―情報提供活動におけるMRの重要性は変わらないと。

佐藤 ロシュと中外製薬は、革新的な創薬とともに個別化医療への取り組みを進めていますが、個別化医療が進むと、医療関係者からは症例ごとに異なる有効性・安全性の情報がスピーディかつ強く求められます。そこはどうしても人を介さざるを得ず、一定数のMR が必要になります。その意味でMRが担う情報提供の重要性は変わりません。一方で、人を介さないオムニ チャネルの重要性も日々高まっており、情報提供にもイノベーションが求められていると理解しています。

―現場の医師とのコミュニケーションについてはどのような方針をとっていますか。

佐藤 中外製薬が力を入れているのは、プロモーションではなく「コンサルティング」です。私たちのコンサルティング活動は3つの軸で成り立っています。
1つは「症例を介したコンサルティング」。患者さんに製品を使っていただいて、その経過をフォローアップしながら、必要な情報を提供し、あるいは治療提案をする。時には他社の薬を推奨するということも含めたコンサルティング活動が根幹にあります。
もう1つは「エリアのコンサルティング」。地域が抱える医療課題の解決に向け、医師間や施設間のネットワーク、患者さんを介する医療連携、さらには行政とのコラボレーションなどを支援するためのコンサルティングです。
3つ目は、副作用を出さないため、あるいは出た時に適切に対応するために、チーム医療をサポートする「施設内のコンサルティング」です。

―本誌のアンケートでは、MRの情報提供活動に対して「有効性・安全性についてバランスよく情報提供してほしい」という声がたくさん寄せられました。

佐藤 私たちは、専門性強化のため機能横断チームでコンサルテーションをするという体制をとっています。より高い科学性が求められる場合には専門MRやメディカルサイエンスリエゾン、安全性に関してはセーフティエキスパート、さらに地域医療ニーズへの様々な対応にはメディカルネットワークリエゾン、チーム医療に関してはチーム医療担当者がそれぞれMRと連携して対応しています(図参照)。

イノベーション評価・促進する制度を

―主力製品のインフルエンザ治療薬「タミフル」について、最近、異常行動との因果関係は明確ではないとして10代への使用差し控えを解除する方針が厚労省から出されました。一方で、タミフル後発品が承認され、塩野義の「ゾフルーザ」が発売されるなど、インフルエンザ治療薬を巡る環境も変化しています。

佐藤 長い時間がかかりましたが、タミフルの10代への使用制限解除については歓迎したいと思います。当時はタミフルしかなく、因果関係を証明することが困難な時代でした。近年は様々な新薬に加え、後発品の市場参入もありますが、私たちとしては、蓄積してきた有効性・安全性の情報をきちんと提供し続け、タミフルへの信頼を裏切らないようにしていきたいと思います。

―ジェネリックの推進も含め、政府の薬価制度改革の流れについてはどう受け止めていますか。

佐藤 社会保障費抑制が世界的に進んでいる状況を考えるとやむを得ない面はありますが、イノベーションが評価されなければ創薬はやっていけません。
革新的創薬には膨大な手間と時間、コストがかかります。政府には、世界に通用する革新的新薬を日本から生み出すことの重要性を深く認識いただき、そのために必要なイノベーションを積極的に評価・促進・推奨する制度設計をしてほしいと強く期待しています。

 

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