ノバルティスファーマのダーク・コッシャ社長(写真)は6月9日、記者会見を開き、降圧剤「ディオバン」の臨床研究不正問題など一連の不祥事を踏まえ、現在再発防止のために取り組んでいる企業風土の改革や、新薬開発を中心とした今後の展望について説明した。
コッシャ社長は、一連の不祥事について「(最大の要因は)社員と経営陣の間のコミュニケーション不足」との認識を示し、全社員の意見を基に策定した同社の「新ビジョン」に沿って、企業文化の改善を進めていることを報告。
新薬開発については、グラクソ・スミスクラインとのオンコロジー領域の事業移管が今年3月に完了したことにより、製品ポートフォリオと開発パイプラインが強化されたと説明。今後は「循環器・代謝」「呼吸器」「眼科」「中枢神経」「移植・皮膚・免疫」「オンコロジー」の6領域に重点的に取り組む方針を示した。
コッシャ社長はまた、患者から免疫細胞を採取し癌細胞を攻撃するよう改変して患者の体内に戻す「CAR-Tセラピー」の開発にも取り組んでいるとし、グローバルの開発チームが臨床試験の実施施設(米国以外で2015年に実施予定)について慎重に検討を行っていると説明した。
●ノバルティスファーマ「日本の開発パイプライン」(新規化合物のみ)
申請中:ダブラフェニブ(BRAF遺伝子変異陽性悪性黒色腫)、トラメチニブ(同)、パノビノスタット(再発難治性多発性骨髄腫) 第Ⅲ相:セリチニブ(ALK遺伝子変異陽性非小細胞肺癌)など
アステラス製薬は、下痢型過敏性腸症候群(下痢型IBS)治療薬「イリボー錠/イリボーOD錠」(一般名:ラモセトロン塩酸塩)の女性患者への適応拡大が5月に承認されたのを受け、6月11日にメディア向けセミナーを開いた。
イリボー錠/同OD錠は、同社が創製したセロトニン5-HT3受容体拮抗剤。「男性における下痢型IBS」を効能・効果としてイリボー錠は2008年10月から、OD錠は2014年1月から使われてきた。今回の承認により女性の下痢型IBS患者にも両剤を使えることとなったが、投与量は、男性の半分の量とされている。
セミナーでIBSの最新事情について講演した川崎医大消化管内科学教授の塩谷昭子氏(写真)は、男性のIBSは「下痢型」「混合型」が多いのに対し、女性のIBSは「混合型」「便秘型」が比較的多く、「下痢型」は17%程度(2006年のインターネット調査)と説明。
IBSの治療については、「患者との良好な信頼関係を構築すること」が最優先と強調し、①優勢症状に基づき、まず食事・生活習慣改善の指導を行い、必要に応じて薬物療法を行う、②不安・抑うつに対しては抗不安薬や抗うつ薬を投与し、心理療法を加えることもある─とした。
●「イリボー錠」の用法・用量
①男性 : 通常成人には5μgを1日1回経口投与。症状により適宜増減(1日最高投与量10μg)
②女性 : 通常成人には2.5μgを1日1回経口投与。効果不十分の場合に増量可能(1日最高投与量5μg)