厚生労働省は6月4日付で、抗PD-1抗体の「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)と「キイトルーダ」(同:ペムブロリズマブ)などの医薬品添付文書の「使用上の注意」改訂を指示する通知を発出した(下掲)。
オプジーボとキイトルーダでは、「重大な副作用」の項で結核を発症する恐れがあることを喚起。結核の感染または既往のある患者を「慎重投与」の対象とする。
改訂に至った理由として、医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、国内外で結核関連症例が集積したことのほかに、▶非臨床試験において、野生型マウスに比べPD-1ノックアウトマウスでは結核菌に感染させた場合に生存率が低下したとの報告がある、▶ニボルマブ投与患者における結核発症率(人口10万対58.2)が日本人全体の発症率(同13.3)の約4.4倍と高い傾向にある、▶抗PD-1抗体とEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の副作用報告を対象として報告オッズ比(ROR)を算出した結果、結核が副作用として知られていないEGFR-TKIに比べ、抗PD-1抗体におけるRORが統計学的に有意に高かった―を挙げている。
直近3年度にPMDAに報告された結核関連症例のうち、薬剤との因果関係が否定できない症例は、ニボルマブで10例、ペムブロリズマブで4例となっている。死亡例はいずれの薬剤においても報告されていない。
片頭痛と群発頭痛に用いる「イミグラン」(一般名:スマトリプタンコハク酸塩)をはじめとするトリプタン系薬剤については、「重要な基本的注意」と「重大な副作用」の項に「薬剤の使用過多による頭痛」に関する記述を追加。頭痛の改善が認められない場合には副作用の可能性を考慮して投与を中止するなど、適切な処置を求める。
国内における頭痛関連症例の集積は少ないものの、海外添付文書の記載内容や処方実態調査結果に関して、PMDAの専門委員の意見も踏まえて調査した結果、改訂することが適切と判断された。
このほか、抗インフルエンザ薬の「ゾフルーザ」(一般名:バロキサビル マルボキシル)については、「重大な副作用」として「ショック、アナフィラキシー」を追記する。直近3年度に報告された関連症例のうち、同薬との因果関係が否定できない症例は16例。死亡例も1例報告されているが、因果関係は明らかになっていない。
「使用上の注意」改訂の内容(2019年6月4日指示分)
トリプタン系薬剤(①スマトリプタンコハク酸塩、②スマトリプタン、③ナラトリプタン塩酸塩、④エレトリプタン臭化水素酸塩、⑤ゾルミトリプタン、⑥リザトリプタン安息香酸塩) |
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販売名 |
①イミグラン錠/同注/同キット皮下注(グラクソ・スミスクライン)他、②イミグラン点鼻液(グラクソ・スミスクライン)、③アマージ錠(グラクソ・スミスクライン)、④レルパックス錠(ファイザー)他、⑤ゾーミッグ錠/同RM錠(沢井製薬)他、⑥マクサルト錠/同RPD錠(杏林製薬)他 |
改訂の概要 |
1.「重要な基本的注意」の項に薬剤の使用過多による頭痛に関する記載を追記 2.「重大な副作用」の項に「薬剤の使用過多による頭痛」を追記 |
アベルマブ(遺伝子組換え) |
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販売名 |
バベンチオ点滴静注(メルクバイオファーマ) |
改訂の概要 |
「重大な副作用」の項に「膵炎」を追記 |
抗PD-1抗体(①ニボルマブ〈遺伝子組換え〉、②ペムブロリズマブ〈遺伝子組換え〉) |
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販売名 |
①オプジーボ点滴静注(小野薬品工業)、②キイトルーダ点滴静注(MSD) |
改訂の概要 |
1. 「慎重投与」の項に「結核の感染又は既往を有する患者」を追記 2. 「重大な副作用」の項に「結核」を追記 |
バロキサビル マルボキシル |
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販売名 |
ゾフルーザ錠/同顆粒分包(塩野義製薬) |
改訂の概要 |
「重大な副作用」の項に「ショック、アナフィラキシー」を追記 |
(医薬品医療機器総合機構資料〈6月4日〉、厚生労働省通知「薬生安発0604第1号」〈6月4日〉)