今年3月に発売された骨粗鬆症の新薬「イベニティ皮下注」(一般名:ロモソズマブ)の投与後に重篤な心血管系事象が発生したとの報告が集積していることを受け、製造販売元のアステラス・アムジェン・バイオファーマと発売元のアステラス製薬は22日、医療従事者向けに適正使用を文書で喚起した。投与患者の選択に当たっては効能の「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」を遵守し、心血管系リスクの高い患者では慎重に判断するよう呼び掛けている。
イベニティは、骨形成促進と骨吸収抑制の作用を併せ持つ抗スクレロスチン抗体製剤。添付文書には、海外で実施されたアレンドロン酸ナトリウムとの比較対照試験において、イベニティ投与群で心血管系事象の発現割合が高い傾向が認められたと記載されている。両社によると、3月4日の発売から3カ月間に報告されたイベニティ投与後の重篤な心血管系事象は11例で、うち1例は同薬との因果関係が否定できない死亡例だった。
両社は医療関係者に対し、▶世界保健機関(WHO)の重症骨粗鬆症の診断基準などを参考に適用患者を選択する、▶虚血性心疾患または脳血管障害の発現リスクが高い患者への投与は有益性と危険性を考慮して慎重に判断する、▶他の医療機関で心血管系リスクの高い疾患の治療中である場合は互いに連携して処方の必要性を検討する―などを求めている。患者指導では、▶虚血性心疾患および脳血管障害の症状・徴候が現れた場合の早期受診、▶心血管系リスクの高い患者への患者カードの携行―について説明することも依頼している。