高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究不正事件を巡る裁判が続く中、ノバルティスファーマのダーク・コッシャ社長(写真)は9月13日、約1年3カ月ぶりに記者会見を行い、信頼回復に向けた同社の取り組みや新薬の開発状況について説明した。
コッシャ社長は、一連の不祥事とジェネリック医薬品浸透により「ディオバン」や「エックスフォージ」(ディオバンとカルシウム拮抗薬の配合剤)が大きく落ち込み、糖尿病治療薬「エクメット」や乾癬治療薬「コセンティクス」などの新製品が堅調に伸びてもその損失を相殺できないとして、「ディオバンファミリー」の売上減の影響の大きさを強調。ただ、その影響は「最終章に入りつつある」とし、「来年には底打ちし、横ばいになる」と期待感を示した。進行中の裁判についてはコメントを控えたが、「公判で最終的な結論が下されれば、その内容に真摯に対応していく」と明言した。
開発中の新薬については、会見に同席した廣瀬徹開発本部長が、目玉の一つとして循環器領域で第Ⅲ相試験の段階にあるサクビトリルバルサルタンを紹介。「海外ではすでに上市されており、慢性心不全を対象とした新しいメカニズムの薬剤として、日本でも1日も早く試験を終わらせ申請したい」と述べた。
●ノバルティスファーマが申請中の新薬(効能・剤形追加を除く)
アルテメテルとルメファントリンの配合錠(適応症:合併症のない急性熱帯熱マラリア)、パシレオチド(適応症:先端巨大症および下垂体性巨人症)
マルホは9月16日、今年7月に製造販売承認を取得した乳児血管腫治療薬「ヘマンジオルシロップ小児用0.375%」(プロプラノロール塩酸塩)について同日付で販売を開始したと発表した。
同剤は、乳児血管腫を適応症とする日本で初めての治療薬。乳児血管腫は「苺状血管腫」として知られている乳幼児に発症する良性腫瘍(日本人の発症率は1%前後)で、一般に1歳くらいをピークに最大化し、多くは5〜7歳くらいまでに自然退縮する。気道付近や目など発症部位により生命・機能に影響を及ぼす場合や、腫瘍の増大、瘢痕の残存によって整容的な問題が生じると判断される場合には積極的な治療が必要とされている。
ヘマンジオルは、フランスのピエール ファーブル デルマトロジー社(PFD社)が開発したプロプラノロール塩酸塩を有効成分とするシロップ剤で、海外では米国、EUをはじめ36カ国で承認されている。マルホは2012年12月にPFD社と独占契約を結び、日本国内における開発を進めてきた。
同剤は希少疾病用医薬品に指定されている。薬価は1mL当たり260.70円。
●「ヘマンジオルシロップ」の用法・用量
通常、1日1〜3mg/kgを2回に分け、空腹時を避けて経口投与。1日1mg/kgから開始し、2日以上の間隔をあけて1mg/kgずつ増量、1日3mg/kgで維持するが、患者の状態に応じて適宜減量する