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GPIFの製薬企業株保有は節度を [お茶の水だより]

No.4825 (2016年10月15日発行) P.15

登録日: 2016-10-17

最終更新日: 2016-10-17

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▶今号「オプシーボ,期中の薬価引下げ実施へ」でお伝えしたように高額薬剤への緊急的対応として、オプジーボを対象に期中の薬価引下げが実施されることが確実となった。また、費用対効果評価の本格導入の可能性も高まり、製薬企業への風当たりは強まる一方、との印象を受ける。しかし、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が公表した2015年3月末時点の保有資産内容からは、違った構図が透けて見えてきた。
▶GPIFが保有する国内株式全銘柄にはトヨタ自動車など日本を代表する企業が並ぶ中、主要な製薬企業の名もあった。GPIFは国内企業だけで2000以上の銘柄を保有。主要製品が公定価格で守られている製薬企業株は安全性が高く、一定数保有することは当然といえる。
▶しかし、各製薬企業の株主の状況を調べてみると、多くの企業でGPIFが実質的な筆頭株主であることがわかった。例えば武田薬品工業は総発行株式約7億9039万株のうち、GPIFが約5350万株、6.77%を保有。配当性向が高いアステラス製薬に至っては7.5%、他の大手国内製薬企業も5~6%台の株式を保有しているケースが多い。GPIFは中長期的な運用を行っているため、いわば公的資金で株価を下支えしている形となっている。
▶GPIFと製薬企業を監督するのはともに厚生労働省だ。薬価への締め付けとGPIFによる株と社債購入でのフォローが表裏一体とは考えすぎか。また、厚労省は医薬品の承認状況や薬価をはじめ、製薬企業の株価に影響を与えるインサイダー情報を豊富に持つ。株価の上昇は両者共通の利益だ。GPIFは他の業界の株も多数保有するが、同じ“親”を持つ製薬企業については、もう少し節度が必要ではないだろうか。

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