【概要】2016年度改定での費用対効果評価の試行導入に向け検討を進めている中医協は、企業から提出されたデータを基に医薬品5品目、医療機器3品目について分析を行うことを決めた。
中医協の費用対効果評価専門部会(田辺国昭部会長)は5月28日、2016年度診療報酬改定での試行導入が検討されている医薬品・医療機器等の費用対効果評価について、医薬品5品目、医療機器3品目を具体例として用い、費用対効果評価の分析・検討を行うことを決めた。各企業から提出されたデータに基づき、同部会の参考人を中心に構成する研究班で分析を進める。
医薬品では、①2005年度以降に有用性加算のついた類似薬効比較方式または原価計算方式で算定、②諸外国で複数の評価機関による費用対効果評価が提出されており、詳細な分析結果が公開─の2つの条件を満たすもので、予想ピーク時売上高が各年度で一番大きい医薬品のうち、原則として古いものから5品目が対象品目となる。医療機器についても、05年度以降に有用性加算等がつき、諸外国の費用対効果評価のデータが入手できるなどの条件に基づき3品目を選定する。
●「研究班の利益相反厳格化を」
選定方法や検討スケジュールについて委員から反対意見は出なかったが、鈴木邦彦委員(日医)は研究班における利益相反の基準について「他の(厚労省の)会議よりも厳しくすべき。研究班の分析結果を評価する第三者的な組織なども必要」と指摘。これに対し佐々木健医療課企画官は、「今回はあくまで具体例を用いた検討の段階。実際に導入する際に、どこまで厳密さを求めるのか検討することになる」と回答した。
詳細なデータの提出を求められることになる製薬企業の立場からは、土屋裕専門委員(エーザイ)が企業の負担が増すことを懸念。「海外データの収集などNICE(英国立医療技術評価機構)が実施するような分析については、企業ではなく研究班が実施すべき」と強調した。
●短期滞在手術基本料3との整合性が焦点
このほか28日には診療報酬基本問題小委員会も開かれ、厚労省が示したDPC制度の今後の検討方針とスケジュール案について了承された。
検討課題の中で注目されるのが、「診断群分類点数表」に関する見直し。DPCは「診断群分類に基づく1日当たりの包括払い」制度だが、2014年度改定で大幅に対象が拡大された「短期滞在手術等基本料3」は入院1件ごとに包括評価するもので、米国の「DRG-PPS」に近い。今後も短期滞在手術等基本料3の対象は拡大する可能性が高いとみられ、DPCとの整合性をどうつけるかがポイントとなる。
●疑義解釈で白内障手術の取り扱い明示
2014年度改定に関しては、6月2日付で厚労省から「疑義解釈資料(その7)」が出された。
その中では解釈を巡り混乱が生じている白内障の「水晶体再建術」の取り扱いについて明示。片眼の同手術を行い、入院から5日以内に退院した患者が退院日から7日以内に再入院し、もう片方の眼にも同手術を行った場合については、1回目は短期滞在手術等基本料3、2回目は出来高で算定する。2回目の入院が退院から7日を超える場合には、同基本料3を2回算定するとした(疑義解釈資料の全文は本誌HP2014年度診療報酬改定関連資料からダウンロードできます)。
【記者の眼】費用対効果評価導入に向けた検討が本格的に始まる。効果指標として英国などで用いられている質調整生存年(QALY)については同部会で問題点が多々指摘されてきた。今後の議論は日本独自の効果指標をいかに構築するかが焦点になる。(T)