【概要】難病治療研究振興財団の研究チームは13日、HPVワクチンの副反応に関する分析結果を日本線維筋痛症学会で報告した。副反応症例の約3分の1が中枢神経症状と判断した。
子宮頸がん(HPV)ワクチン接種後に副反応報告が相次いでいる問題で、難病治療研究振興財団(理事長=坂口力元厚労相)の研究チームは13日、厚労省のワクチン副反応検討部会に報告された約2500人の副反応症状に関する分析結果を日本線維筋痛症学会で報告した。
同チームはワクチンに含まれるアルミニウムなどのアジュバントが中枢神経や免疫システムに異常を発生させている可能性が高いとし、副反応症例延べ7676例のうち約3分の1にあたる2570例に何らかの中枢神経障害が見られると分析。副反応検討部会が「心身の反応により惹起された症状が慢性化されたもの」とする見解に疑義を呈し、一連の症状は、ワクチンが引き起こす「子宮頸がんワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)」であると提唱した。
●副反応部会の6倍、1112人を重篤と判断
HPVワクチンは、2009年12月から今年3月末までに約338万人に接種され、約2500人の副反応報告が寄せられている。副反応症状は広範囲疼痛や失神、痙攣、月経不順、記憶障害など多岐にわたるが、副反応検討部会はそのうち注射接種部位以外の広範囲疼痛や運動障害などの176人を重篤と判断。副反応の原因はワクチンそのものではなく「心身の反応」と結論づけた。
研究チームを率いる西岡久寿樹東京医大医学総合研究所長は13日の会見で、厚労省に報告されたうち約半数の1112人を重篤と判断したと発表。副反応検討部会が報告医からの重篤症例のうち中枢神経、感覚器障害、メンタル障害、自律神経障害などの副反応について検討していないことを問題視した。研究チームが実際に治療した44人の多くに脳血流の低下が認められたことなどを踏まえ、ワクチンとの因果関係は明らかでないとしつつ、「心身反応よりも中枢神経に異常をきたしていると解釈した方が合理的だ」と説明した。同チームでは年内をメドにHANSの治療指針策定を目指すという。
●「接種者全員の追跡調査を」
一方、厚労省は副反応症状に対する医療体制の整備と調査を強化する方針を打ち出した。「多様な症状が発生する場合」も調査対象に加えられたが、「接種後1カ月以上の発症は因果関係が薄い」とする副反応検討部会の見解に基づき、調査期間は現行通り接種後1カ月間とされた。研究チームの調査では重篤な副反応が出るまでの平均期間は約8.5カ月とされ、発症が遅いほど重篤化するケースが多い。西岡氏は「このままでは国のワクチン行政が信頼されなくなる」との懸念を示し、原因究明に向け「期間で区切らず全例の追跡調査をすべき」と訴えた。
【記者の眼】厚労省のワクチン副反応検討部会は6月以来開催されていない。今回の研究チームの報告に加え、日本神経免疫学会学術集会でも脳に障害が出ている可能性が指摘された。次回会合にはこれらの報告の研究者を参考人に招き、議論を深めてもらいたい。(T)