日本循環器学会学術集会で3月19日、シンポジウム「抗血栓療法新時代」が開かれ、新しい経口抗凝固薬(NOAC)の有効性に関する報告がなされた。
井上雅博氏(大田記念病院、写真左)は、包括医療費支払い制度(DPC)を採用している急性期病院のうち、312施設のデータを解析。2012年10月~14年9月に心房細動により外来で抗凝固療法を行い、6週間以内に入院した6万6693人の退院時の記録を分析した。
その結果、有効性の評価である虚血性脳卒中の発生率は、ワルファリン1.67%に対し、NOACはダビガトラン1.59%、リバーロキサバン1.62%、アピキサバン0.83%と低かった。一方、安全性の評価である頭蓋内出血、上部消化管出血、死亡についてもNOACの発生率が低く、頭蓋内出血に関しては、ワルファリン1.35%に対し、ダビガトラン0.43%、リバーロキサバン0.79%、アピキサバン0.50%だった。井上氏は、「DPCというビックデータによってNOACの有効性、安全性が優れていることがわかった」と説明した。
山本剛氏(日本医大、写真右)は、静脈血栓塞栓症(VTE)に対するNOACの有効性を自施設の成績から報告。NOAC承認前の2013年と、承認後の14年、15年の三段階で入院期間の変化を検討した。
NOAC承認前の入院期間の中央値は17日。従来治療は未分画ヘパリンとワルファリン投与量を細かく調整する必要があったが、14年のエドキサバン承認後はヘパリンからNOACに切り替えができるようになり、NOAC使用はVTE患者の7割を占め、入院期間の中央値は12日と有意に減少した。15年にリバーロキサバン、アピキサバンが承認され、初期治療から維持治療までをNOACのみで行うことができるようになってからはNOACの使用割合が9割となり、入院期間の中央値は8日に減った。
山本氏は「VTE治療がNOACに急速にシフトしており、入院期間が短縮し、外来治療が可能になっている。今後も治療の標準化・適正化が促進されるのではないか」と期待した。