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がん免疫療法の現状と将来展望を専門家が解説 [各社入り乱れて開発]

No.4803 (2016年05月14日発行) P.10

登録日: 2016-05-14

最終更新日: 2016-12-01

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免疫療法の研究者である玉田耕治氏(山口大教授、写真)が4月25日、仙台市で開かれた日本泌尿器科学会で講演し、免疫チェックポイント阻害剤を中心としたがん免疫療法の現状と展望について解説した。免疫チェックポイント阻害剤の1つであるニボルマブは、免疫細胞の活性化にブレーキをかける免疫チェックポイント分子PD-1を阻害する薬剤。日本では、悪性黒色腫、非小細胞肺がんに承認されているほか、腎がんへの承認申請が行われている。
玉田氏はニボルマブの治療効果について、悪性黒色腫28%、肺がん18%、腎がん27%という奏効率と、継続的な抗腫瘍効果が見られる特徴を説明。副作用については、日本で承認された14年7月から今年2月末までの推定投与患者3483人のうち、重篤例は236人(約7%)で、症状は間質性肺炎や胃腸障害、内分泌障害、肝機能障害、皮膚症状、劇症1型糖尿病などと紹介。また奏効率を上げるため、他の分子を標的とした免疫チェックポイント阻害剤の開発が「各社入り乱れて進んでいる」と話したほか、同剤を中心に複数の治療法を組み合わせる複合免疫療法の開発も世界で進んでいることを紹介した。
さらに現在、がんを攻撃するT細胞を遺伝子改変で作製する研究が進み、玉田氏も研究を進めるキメラ抗体受容体(CAR)を利用したCAR-T細胞療法は急性リンパ性白血病に対し92%の完全寛解率であることを説明。「次のブレークスルーと言われている」と話し、今後の固形がんにおける研究に意欲を示した。

【記者の眼】
免疫チェックポイント阻害剤を巡っては、肺癌患者で年間約3500万円という超高額な薬価が波紋を呼んでいるが、その一方で、奏効率を上昇させるための熾烈な研究競争が行われている状況が窺い知れた。医療費の財源に限りがある中で、こうした研究成果を広く国民が享受するための模索は始まったばかりだ。(N)

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