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高額医薬品の算定ルール「見直しの時期」 - 有効例に限定した「適正使用」などが主な論点に [薬価制度改革]

No.4805 (2016年05月28日発行) P.11

登録日: 2016-05-28

最終更新日: 2016-12-06

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【概要】政府や医療界が財政への影響から危機感を募らせている高額医薬品を巡り、薬価算定ルールの見直しに向けた議論が本格化しそうだ。厚労省保険局医療課の中井清人薬剤管理官は「非常に切迫に感じている」とした上で、「見直しが必要な時期に来ている」との考えを示した。

近年急増する高額医薬品の薬価算定ルールを巡り、各方面から抜本的見直しを求める声が強まっている。4月に開かれた財務省の財政制度等審議会財政制度分科会では「オプジーボ」の適応拡大による国家財政の危機が指摘された。オプジーボは悪性黒色腫を効能・効果として薬価収載され、3月には非小細胞肺がんの適応が拡大。財政審では非小細胞肺がんの対象は少なく見積もっても5万人とし、 1年間の薬剤費は1兆7500億円に上るとの試算を示している。これに加え、オプジーボの適応を巡っては腎細胞がんが申請中、食道がんや胃がん、肝細胞がんなど6つのがんに関する臨床試験がフェーズⅢの段階で、数年内の大幅な適応拡大が確実な状況だ。
こうした状況を踏まえ、政府の経済財政諮問会議は『骨太方針2016』の素案で、「費用対効果評価の導入」「革新的医薬品等の使用の最適化」などについて来年度には結論を得ると明示した。

●中井薬剤管理官「非常に切迫に感じている」
18日の中央社会保険医療協議会(田辺国昭会長)では、中川俊男委員(日本医師会)が「今の仕組みでは(医療保険財政が)到底もたない」とし、患者数や市場規模などを考慮した薬価算定の新たな仕組みの構築が急務と改めて強調。
これに対し、厚労省の中井清人薬剤管理官は「非常に切迫に感じている。必要な方に確実に提供しつつ、何らかの見直しが必要な時期に来ている」との考えを示した。
今後の見直しを巡る論点(表)は、(1)処方を有効例に限定するなどの「適正使用」、(2)費用対効果評価や新規性などを考慮した「適正薬価」、(3)高額療養費の見直しなどの「総量規制」─となる見通しだ。

●肺癌学会のガイドライン委員会が適正使用の検討開始
一部学会では適正使用の検討を開始した。日本肺癌学会のガイドライン検討委員会は、『肺癌診療ガイドライン』に医療経済の視点を入れることの是非について検討する方針だ。検討委員会委員長の山本信之氏(和歌山医大)は本誌取材に対し、「乱暴な言い方をすれば、命をどこまでお金で引き換えられるかというシビアな話になる。英国では生活習慣病などで医療経済の視点を盛り込んだ治療指針が政府の方針で決まっている。海外の事例も参考にするが、日本の政府でそうしたコンセンサスはなく難しいところだ」と述べている。

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